
中国は、軍事力や先端技術分野で急速に拡大を続ける一方、国内経済は不動産市場の崩壊や消費の低迷、雇用情勢の悪化によって不安定な状況が続いている。習近平国家主席が景気回復よりも安全保障と技術面での自立を重視する路線を推し進める中、国民生活に直結する経済分野の負担がさらに増大しているとの見方が出ている。
ウォール・ストリート・ジャーナルは10日(現地時間)、習主席の就任から10年以上にわたり、中国軍の戦力が強化され、製造業や先端技術産業も大きく成長した一方で、不動産市場の崩壊や雇用情勢の悪化により、経済の幅広い分野が困難に直面していると報じた。
同紙は、習主席が経済よりも国家安全保障を優先していると指摘した。中国政府は、AI・半導体・電気自動車(EV)・ロボットといった戦略産業の技術的自立に向けて巨額の資金を投じている一方、雇用改善や中間層の底上げに不可欠な経済改革は先送りになっているとも指摘している。
こうした傾向は、地方財政にも表れている。
中国・西安市は昨年、道路の維持管理や裁判所の運営に充てる予算を削減する一方、科学技術分野の予算を約80%増額した。財政収入が減少する中、小中学校向けの予算が10%以上削減された一方、地元の軍関連組織には別途資金が配分された。
仏山市の状況も同様だ。香港に近いこの製造業都市には、かつて建築資材・家具・家電製品の工場が集積していたが、昨年の経済成長率は0.2%にとどまった。当局は仏山市をロボット産業の拠点へと転換しようとしているが、現在の産業規模は市全体の経済を下支えするには依然として小さい。
市内では空き工場に貸し出し案内が相次いで掲げられており、地元の工場向け人材紹介業者は「来年はもう稼げなくなるのではないかと、誰もが将来を不安視している」と語った。
中国は毛沢東の死後、数十年にわたり経済成長を国家運営の最重要目標としてきた。しかし、習近平体制の下では、政治的な目標と経済の実態との乖離が広がっている。
同紙は、学生たちは「中華民族の偉大な復興」という理念を繰り返し教え込まれているが、一方で数百万人の若者が卒業後も就職できず、親に依存せざるを得ない状況に置かれる可能性が高いと報じた。
習主席はこれまで、「安全保障は発展の前提だ」と繰り返し強調してきた。この考え方が、中国経済への国家関与を一段と強め、技術・農業・軍事分野での自立に向けた大規模投資の根拠となっている。
中国の国防費は習主席の就任以降、2倍以上に膨らみ、2024年も前年比7%増となった。一方、中央・地方政府を合わせた1人当たりの教育支出の伸び率は1%をわずかに上回る水準にとどまった。
中国が不動産依存型の経済構造から脱却する必要があるという点については、多くの経済学者の見解がおおむね一致している。AIやロボット、先端製造業の育成は、深圳市や杭州市といった一部のハイテク都市では新たな成長の原動力となっている。もっとも、こうした戦略産業だけでは、不動産市場の低迷や失われた雇用を十分に補えていないのが実情だ。
中国の不動産・住宅建設部門が国内総生産(GDP)に占める割合は、2023年の16%から昨年は11%へと低下した。一方、リチウムイオン電池やロボットなど6つの戦略産業の比率は、同期間に5.5%から6.3%へと小幅な増加にとどまった。
中国政府は昨年、5%の経済成長目標を達成したものの、過去の高成長期と比べると大幅に低い水準にある。今年は成長率を4.5%以上に維持することを目指している。
消費の回復も鈍い。中国政府は、人々が貯蓄より消費を優先するよう促すための社会保障制度の拡充には比較的慎重な姿勢を示している。同紙によると、中国の社会保障関連支出は2023年時点でGDPの約9%と推計され、メキシコやトルコと同程度にとどまり、主要先進国の半分にも満たないという。
仏山の労働者たちは、こうした変化の影響を直接受けている。
陶磁器タイルメーカーのモナリザグループは、2022年から2024年にかけて売上高が約4分の1減少し、従業員数も約20%減となった。
需要の先行きが見通せない中、正社員より臨時雇用を優先する工場が増えている。仏山で職を探している60代の男性は、かつて家具工場で月1,500ドル(約24万円)を稼ぎ、妻と4人の子どもを養っていたと話し、現在はその半分の賃金でも働く意向を示した。
若者を取り巻く環境も厳しさを増している。
あるグラフィックデザイナーの男性は、昨年12月に職を失って以降、求職活動を続けながら生活費を切り詰めていると語った。実務経験があるにもかかわらず、提示される月給は600ドル(約9万5,000円)程度にとどまっており、「現在の経済状況では、条件をさらに下げるしかない」と打ち明けた。
習主席の安全保障と技術自立を重視する路線は、2030年までを対象とする現在の5か年計画においても中核的な方針となっている。
同紙は、対外的には軍事力や先端製造業を前面に押し出して大国としての存在感を示す一方、国内では雇用・所得・消費マインドへの下押し圧力が強まっていると伝えている。















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