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宇宙望遠鏡を捕まえて軌道を押し上げるNASAプロジェクト

梶原圭介 アクセス  

宇宙望遠鏡をつかんで押し上げるNASAプロジェクト

引用:NASA
引用:NASA

宇宙爆発で発生するガンマ線を観測してきた宇宙望遠鏡が地球に落下するのを防ぐため、宇宙空間で望遠鏡をつかみ、高度を上げるという異例のプロジェクトが進められていると、米ニューヨーク・タイムズ(NYT)が29日(現地時間)に報じた。

米航空宇宙局(NASA)が保有するニール・ゲーレルス・スウィフト宇宙望遠鏡は、2004年の打ち上げ以来、宇宙で最も激しい爆発から発生するガンマ線を観測してきた世界唯一の宇宙望遠鏡だ。

ガンマ線は電波、可視光線、X線と同じく光の一種だが、最も高いエネルギーを持つ。1960年代、核兵器実験を監視するために打ち上げられた人工衛星が、宇宙のあちこちで発生するガンマ線の閃光を偶然発見した。

ほかの望遠鏡がガンマ線バーストを捉えると、スウィフトは爆発が起きた方向へ向きを変え、光が消えていく間のガンマ線を詳しく測定する。

短時間に放出されるこれらのガンマ線は、星の爆発や、中性子星と呼ばれる小さく極めて密度の高い星同士の衝突など、宇宙の激変の瞬間を伝えている。

スウィフト宇宙望遠鏡は打ち上げ当初、地上約595キロの上空を周回していた。しかしその高度は徐々に下がり、現在は約338キロにまで低下している。当初の高度では空気分子がほとんど存在しなかったが、現在の高度では大気の密度が高まったことで、スウィフトの軌道飛行に対して強い空気抵抗(大気抗力)として作用している。そのため、スウィフトは数か月以内に大気圏に突入し、ばらばらになる危険にさらされている。

スウィフトを救うための冷蔵庫ほどの大きさの宇宙船が、30日午後10時23分(現地時間)、太平洋中央部のマーシャル諸島クェゼリン環礁から打ち上げられる予定だ。

「LINK」と名付けられた宇宙船を開発したのは、米スタートアップのカタリスト・スペース・テクノロジーズだ。カタリストは6年前、宇宙ロボットを展開し、宇宙空間で衛星やその他のインフラを建設・修理し、燃料補給するという構想の下で設立された。同社は昨年9月にNASAと契約を結んだ後、通常なら数年かかる宇宙船開発を約9か月で終えた。

NASAが同社に示した条件は、スウィフトの軌道を上昇させること、そしてLINK宇宙船がスウィフトを損傷させないことだけだった。

NASAがスウィフトに代わる望遠鏡を製作する場合、数年の期間と数億ドルの費用がかかるとみられていた。しかしカタリストは3,000万ドル(約48億8,100万円)で受注した。

LINK宇宙船がスウィフトの救出に成功すれば、精密なガンマ線バースト観測をさらに数年間続けられるようになる。NASAが当初、スウィフトの運用期間を2年と見込んでいたことを考えれば、大きな費用削減となる。

カタリストが低価格の在庫ロケットを確保できたことで、低予算でプロジェクトを進められるようになったのは幸運だった。

スペースXのファルコン9など、多くの商業用ロケットの価格は、総予算3,000万ドルを大きく上回るためだ。

同社は、航空宇宙・防衛技術企業ノースロップ・グラマンが保有する「ペガサス」というロケットを使い、LINK宇宙船を打ち上げる予定だ。

このロケットは、高度4万フィート(約12キロ)まで飛行する航空機の機体下部に取り付けられ、分離されて発射される。ノースロップは45回打ち上げられた後、2021年以降は一度も打ち上げられていなかったペガサスロケット1基を長期保管していた。

航空機が移動式の発射基地の役割を果たせることは、大きな利点となった。スウィフトの軌道は、フロリダや、さらに北にあるほかの場所からは容易に到達しにくいためだ。

今年初め、スウィフトは落下を遅らせるために必要な機動を行う目的で、ガンマ線バーストの観測を中断した。スウィフトが通常通り運用されていれば、現在の高度は今より約40キロ低くなっていたとみられる。

LINK宇宙船は打ち上げ後、1〜2週間かけて正常に作動するかを確認し、その後、約1か月半かけてスウィフトにゆっくり接近してつかむ予定だ。その後2か月かけて、スウィフトの軌道を約161キロ押し上げる。計画が成功すれば、スウィフトはさらに10年間、軌道上にとどまることができる。

スウィフトによるガンマ線観測は、新たな謎を解く上で重要な役割を果たす見通しだ。

ガンマ線バーストには2つの種類がある。1〜2秒以下続く短いものと、数分または数時間続く長いものだ。

天体物理学者は数十年にわたり、短いものは中性子星の合体によって生じ、長いものは大型の星の崩壊によって生じると考えてきた。

しかし、中性子星の合体が短いバーストではなく長いバーストを生み出した事例が見つかり、そうした認識は覆された。宇宙のガンマ線は、新たな謎をはらむ分野となっている。スウィフトが今後10年以上にわたり宇宙ガンマ線の観測を続けられれば、その謎を解く上で決定的な役割を果たす可能性がある。

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