製油施設への集中攻撃でロシアのエネルギー供給に打撃

ロシアによる侵攻開始から4年5カ月にわたり抗戦を続けるウクライナが、最近はロシアの製油施設への攻撃を強化している。ウラジーミル・プーチン露大統領が製油インフラへの攻撃による燃料不足を認めるほど影響が広がっており、膠着状態が続く戦況を左右する新たな要因となるか注目されている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は5日、ポーランドの安全保障コンサルティング会社ロシャン・コンサルティングの分析を引用し、ウクライナが今年に入りロシアの製油施設に少なくとも194回のドローン攻撃を実施したと報じた。これは前年同期の約11倍に当たる。
FTによると、ウクライナは5月だけでロシアの製油施設を16回攻撃したという。これは2022年にロシアがウクライナへの侵攻を開始して以降、月間最多となる。6月には首都モスクワにある大規模製油施設も複数回攻撃した。
特に6月18日の攻撃後、ロシア国防省は「ウクライナ軍のドローン555機を迎撃し、このうち約200機はモスクワ周辺で撃墜した」と発表した。迎撃実績を強調する一方で、多数のウクライナ軍のドローンがロシア大統領府のある首都モスクワ周辺に到達したことも認めた形となった。モスクワ当局によると、この攻撃では複数の製油施設で火災が発生し、鎮火まで数時間を要したという。この攻撃は直前に開催された主要7カ国(G7)首脳会議と北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でウクライナ支援強化が打ち出された直後に実施された。
今年上半期にロシアが迎撃したウクライナ軍のドローンは少なくとも約6万4,000機に上る。1月と2月は月6,000機未満だったが、5月と6月にはそれぞれ約1万4,000機、約1万7,000機へと急増し、ロシアの防空網への負担が増している。
ウクライナによる標的を絞った攻撃は、ロシアのエネルギー供給にも影響を及ぼしている。ウクライナ軍参謀本部は4日、一連の攻撃によりロシアの製油能力の42.7%が機能停止に追い込まれたと発表した。ロイター通信は、相次ぐドローン攻撃により6月のロシアの燃料生産量は前年同月比で25%減少したとみられると報じた。ウクライナは2025年8月以降のロシア石油業界の損失額が累計135億ドル(約2兆2,000億円)に達すると試算している。
こうした中、ロシアでは燃料供給への懸念が強まっている。ロシア大統領府は6月30日に「ガソリンを輸入する」と発表した。プーチン大統領が「燃料不足が進んでいる。政府が対応している」と述べてから2日後のことだった。これを受け、ガソリン3万~4万トンを積んだタンカー2隻がインドを出港してロシアへ向かい、カザフスタンも8月までに5万トンのガソリンを供給することになった。
ロシアは日量の原油生産量で米国、サウジアラビアに次ぐ世界第3位の産油国だ。

原油や石油製品の輸出で今年4月だけでも191億8,000万ドル(約3兆1,000億円)の収入を得た。そんなロシアがウクライナによる製油施設への攻撃を受け、エネルギー不足に直面する事態となっている。
プーチン大統領が代替供給の確保を急いだ背景には、戦争の長期化に加え燃料不足への不満が国民の間で高まることへの警戒があるとの見方も出ている。実際、モスクワなど各地ではガソリンの通常販売が停止され、一部では旧ソ連時代を思わせる配給制も導入されている。
英紙テレグラフは3日、ロシア各地で燃料不足が深刻化し、ガソリンスタンドには最長約5キロの行列ができていると報じた。シベリアでは900台以上の車が給油のため36時間待機したケースも確認された。ある女性客は「2時間待っても給油できなかった」と涙を流し、ある男性客は「10リットルしか販売できない」と告げられて抗議する場面もあったという。
モスクワ・タイムズはサラトフ州やクラスノダール地方など一部地域では、公務員証を提示した公務員にしかガソリンを販売していないと報じた。また、ロシアが2014年から実効支配するクリミア半島では、製油施設への攻撃の影響でガソリン価格が通常の約3倍に高騰したと米政府系メディアのボイス・オブ・アメリカ(VOA)が現地関係者の話として伝えた。
ウクライナが製油施設への攻撃を強化する背景には、ロシア国内の戦争疲れをさらに深刻化させる狙いがあるとの見方も出ている。エネルギー不足による物価上昇や生活苦への不満が高まり、プーチン政権への終戦圧力につながるとの分析だ。
一方、ロシアは大規模な空爆で対抗している。NATO首脳会議開幕前日の6日には、ウクライナの首都キーウをドローンやミサイルで攻撃し、少なくとも11人が死亡した。今月2日にもミサイル74発とドローン約500機による大規模攻撃を実施し、少なくとも30人が死亡した。
これに対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「ロシアの戦争資金を支えるエネルギー施設への攻撃を継続する」と述べ、製油施設などへの攻撃を続ける方針を示した。
ウクライナによるエネルギー施設への攻撃とロシアの大規模空爆が続く中、開幕するNATO首脳会議で戦争終結に向けた突破口が見いだされるかも焦点となる。ドナルド・トランプ米大統領とゼレンスキー大統領は先月のG7首脳会議に続き今回のNATO首脳会議でも首脳会談を行う予定だ。トランプ大統領は4日、ゼレンスキー大統領とウラジーミル・プーチン露大統領と相次いで電話会談を行い、終戦に向けた仲介に意欲を示している。













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