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欧州の「変身橋梁車」が離島防衛を変える?ドイツ製M3に防衛装備庁が注目する理由

望月博樹 アクセス  

ドイツが開発したM3 Amphibious Rigは、走行中に車体側面の膨張式ポンツーンを展開するだけで水上モードへ切り替わる“変身”渡河車両だ。車両重量は約28 t、全長13 mで、見た目は大型ミサイル運搬車に似ているが、目的は戦車や工兵装備を対岸へ運ぶ浮橋・フェリーのプラットフォームにある。

400 hpディーゼルエンジンで陸上は最高80 km/hを発揮し、河川到達後は360°旋回可能なポンプジェットで最大14 km/hで航行する。車内からポンツーンと推進装置を遠隔操作できるため、河岸での乗員露出を最小化できる点も特徴だ。

各車に装備されたランプを用い、複数台を横方向に連結すれば即席橋梁やフェリーを構築できる。たとえば8台を接続すれば長さ100mの浮橋が完成し、レオパルト2やチャレンジャー2など60t級主力戦車も通行可能。2台連結のフェリー形態なら戦車2両同時輸送も可能で、展開所要は10〜20分程度と迅速だ。

現在の運用国はドイツ、イギリス、スウェーデン、シンガポール、インドネシア、台湾、ラトビアなどで、日本では正式導入されていない。陸上自衛隊は独自に92式浮橋(最大橋長104 m)や07式機動支援橋(最長60 m、CL60対応単径間橋)を主力とし、重装甲部隊の渡河を担っている。

長崎県佐世保に司令部を置く水陸機動団と海自の新編「水陸・掃海戦群」(2026年3月編成予定)が連携し、離島防衛・奪還作戦能力を強化中だ。防衛装備庁は欧州製架橋システムの性能比較も行っており、今後の装備選定ではM3級の迅速展開能力がベンチマークになる可能性がある。

M3は2003年のイラク戦争で英軍がシャット・アル・バスラ川を渡る際に初実戦投入され、AS90自走砲や戦車を前進させた。その後ポーランド「Anakonda 16」演習では34台が接続され、世界最長350 m級の浮橋を構築した記録もある。こうした実績は、地震や洪水が多い日本国内での災害派遣用途にも示唆を与える。

M3は車両単体で道路走行・水上航行・橋梁構築をこなす統合設計により、従来のトラック+橋節方式より部隊編成を小型化できる。日本の既存装備と比べて展開スピードとフェリー能力で優位性があり、離島奪還や大規模水害時の即応インフラとして導入検討余地は大きい。今後の装備化動向が注目される。

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