
ドナルド・トランプ米大統領がイラン産原油の販売やドル決済を認める方針を示し、数十年にわたって続いてきた対イラン制裁の大幅な緩和に乗り出している。しかし、米国の銀行や企業の間では、トランプ政権の方針を信じて取引に踏み切った結果、将来的に巨額の制裁金を科されるリスクを警戒し、取引に慎重な姿勢を取る動きが広がっている。
29日(現地時間)、ブルームバーグ通信によると、トランプ政権はイランとの停戦合意を履行するため、イラン産原油や燃料の販売を認めるとともに、数十億ドル相当の凍結資産を解放する方針を示した。
トランプ大統領とイランのマスード・ペゼシュキアン大統領が17日に署名した14項目の覚書(MOU)には、双方が合意した日程に従い、米国の対イラン制裁を段階的に解除する方針が盛り込まれている。
また、米財務省は技術協議が行われる60日間を対象に、既存の制裁を一時的に免除する一般許可Xを発行した。これにより、イラン産原油取引の代金をドル建てで決済することが可能となった。
しかし、トランプ大統領がイランによる停戦違反を批判した後、米軍が再びイランを攻撃したことで、合意がいつ崩れてもおかしくないとの懸念が強まっている。
60日以内の取引完了でも、銀行は慎重姿勢

制裁問題に詳しい専門家は、60日以内にすべての手続きを終える一回限りの取引は可能だとしても、実際に決済を担う金融機関を確保するのは容易ではないと指摘している。
米財務省外国資産管理局(OFAC)のアダム・スミス前顧問は、「制裁を完全に順守しているという確信が必要だ」としたうえで、「銀行や決済機関が取引処理をためらう可能性がある」と述べた。
イランは1979年のイスラム革命以降、核開発や地域の武装勢力への支援を理由に、世界でも最も厳しい制裁措置を受けてきた。米国の歴代政権と議会は数百件に及ぶ制裁措置を積み重ねており、それらを一度に撤廃することは容易ではない。
金融機関は、制裁解除の過程においても一般企業以上に慎重な姿勢を取る。合意が破綻したり政権の方針が転換された場合、これまで認められていた取引であっても、議会や当局の調査対象となる可能性があるためだ。
トランプ大統領は、イラン産原油の販売代金を米国が管理するエスクロー口座に預ける案や、米国産農産物の購入に限定して使用させる案にも言及した。しかし、これらの内容はMOUには盛り込まれておらず、イラン側はこの提案を一蹴した。
BNPパリバに89億ドルの制裁金…制裁違反の高い代償

企業が最も懸念しているのは、巨額の制裁金を科されるリスクだ。
フランスの銀行BNPパリバは2014年、イラン、スーダン、キューバに対する米国の制裁に違反した疑いで、約89億ドル(約1兆4,500億円)の和解金・制裁金を支払った。その他の世界の大手銀行も、過去の対イラン取引を巡って巨額の制裁金を支払っている。
トランプ政権がドル決済を認めるには、米大手銀行や米国の金融ネットワークと接続された金融機関の参加が不可欠だ。しかし、銀行側は、明確なガイドラインや免責措置が示されない限り、取引を処理することは難しいとの立場を崩していない。
企業側も米財務省に対し、法的解釈やガイドライン、さらなる法的保証を求めるとみられる。60日間という限定的な許可だけを根拠に新たな事業を開始するには、リスクが大きすぎるとの判断だ。
また、恒久的な制裁解除も容易ではない。2015年に成立したイラン核合意審査法では、イランとの核合意について議会が審査することが定められている。仮に米政権が今回のMOUは核合意ではないとして議会審査を回避した場合でも、対イラン強硬派の議員が取引企業や銀行に圧力をかける可能性がある。
結局、トランプ大統領はイランとの原油取引やドル決済を認めたものの、金融業界では、その措置が60日後に撤回される可能性を強く警戒している。














コメント0