
中国の経常収支統計を巡る論争が欧米の経済学界で再び活発になっている。中国が貿易黒字を実際より小さく見せるために統計を操作しているとする批判と、統計の精度を高めるための正当な措置だとする擁護論が対立している。
この議論を主導しているのが米シンクタンク、外交問題評議会のブラッド・セッツァー氏だ。セッツァー氏はバラク・オバマ米政権で財務次官補、ジョー・バイデン米政権では米通商代表部(USTR)の顧問を務めた。セッツァー氏は中国の貿易黒字が実態より大幅に過小評価されており、中国政府が現実とかけ離れた統計によって世界を誤導していると主張している。
セッツァー氏は22日に公表した論考で「中国は2022年にデータ集計方法を変更し、黒字額を意図的に縮小した」と指摘した。その上で「関税統計上の貿易黒字が急拡大した時期に、経常収支上の黒字を小さく見せた」と述べている。中国税関の統計では、2024年の中国の年間貿易黒字は約1兆ドル(約162兆7,600億円)だった一方、中国国家外貨管理局が公表した経常収支上の黒字は約4,000億ドル(約65兆1,000億円)にとどまったという。
こうした差は中国独自の輸出入の計算方法によるものだ。例えば、アップルのiPhoneが中国で生産され、そのまま中国国内で販売された場合でも中国当局はこれを貿易赤字として計上する。付加価値税がアイルランドで徴収されることが理由とされている。
具体的には、中国のFoxconn工場がアップルに250ドル(約4万円)でiPhoneを納入した場合、中国は250ドルを輸出として計上する。その後、中国国内で600ドル(約9万8,000円)で販売されると、同じiPhoneを600ドルで輸入したものとして計上する仕組みだ。このiPhoneは国外へ一度も出ていないが、中国の統計上では350ドル(約5万7,000円)の貿易赤字が発生したことになる。
一方で、この集計方法は国際基準に沿ったものだと擁護する声もある。ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のニコラス・ラディ研究員は「中国は2021年に国際通貨基金(IMF)の指針に基づいて貿易統計を変更した」と説明した。iPhoneの知的財産権は米国に帰属するため、中国国内の製造業者が受け取る収入だけを中国の輸出として計上するのが適切だという見方だ。ただしラディ研究員は、中国政府が経済統計を選別して公表していることには懸念が残るとも付け加えた。
米国や欧州が中国製品に対する関税を強化する中、中国の貿易統計を巡る論争はさらに注目を集めている。中国の集計方法では輸出額が実態より少なく見えるため、米国などによる関税措置が過剰であるとの印象を与えかねないとの見方も出ている。














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