
米国で移民に対する取り締まりが暴力的な様相を見せるなど、西側諸国が移民に対して次第に門戸を閉ざす中、スペインが対照的な政策を打ち出した。スペイン政府は27日、最低でも50万人を超える未登録移民(不正規滞在者)に合法的な在留資格を付与する、大規模な合法化計画を発表した。この方針について、英「BBC」や米紙「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」などが相次いで報じている。
エルマ・サイス包摂・社会保障・移民相は「今日は我が国にとって歴史的な日だ」と述べ、今回の措置について「人権、社会統合、共存を基盤としながら、経済成長や社会的結束とも両立し得る移民モデルを強化するものだ」と強調している。
スペイン政府によると、2025年12月31日以前にスペインに入国し、少なくとも5か月以上、実際に国内に居住していたことを証明でき、かつ犯罪歴のない未登録移民が合法化の対象となる。難民申請者が含まれる可能性もあり、すでにスペインで生活している子どもも対象に含まれるという。これらの条件を満たす移民が申請し、承認されれば、まず1年間の居住許可が与えられ、その後は更新手続きを通じて滞在を延長できる。この居住許可には労働許可も付与され、スペイン全土のいずれの事業体でも合法的に就労することが可能となる。
社会労働党主導の連立政権はこれまで、「移民は経済に不可欠な存在だ」とのメッセージを一貫して強調してきた。今回の措置は、労働力の確保や市場拡大を図りつつ人権の保護も進めることを目的としたもので、左派連立政権による大規模な移民合法化政策としては約20年ぶりとなる。なお、この措置は内閣が王命として承認したため、通常の法案とは異なり、議会での採決を介さず即時に発効する。
ペドロ・サンチェス首相率いる社会労働党政権は前日、未登録移民の合法化を以前から求めてきた急進左派政党「ポデモス(Podemos)」と、この措置について合意した。ポデモスは2023年に社会労働党政権の発足時に連立に参加したものの、まもなく離脱していた。今回の合意を受け、ポデモスは今後、議会において政権を支援する方針を示している。
今回の措置は、市民社会で長年議論されてきた大規模な移民合法化に関する立法提案を、政府案として取り込んだものだ。「今すぐ合法化」キャンペーンと呼ばれるこの市民立法提案は、2021年から推進され、約70万人分の署名と900を超える団体の支持を集めたが、これまで議会では長く審議が停滞していた。
ペドロ・サンチェス首相は移民を「スペインの富、発展、繁栄の源泉」と位置づけ、特に社会保障制度への財政的貢献を強調してきた。ポデモスのイレーネ・モンテーロ前大臣も「権利を付与することこそが人種差別への答えだ」と述べ、未登録移民を社会の「影」から引き出し、正規の構成員として認めることが、差別や排外的感情を和らげる道だと主張している。
一方、保守系シンクタンク「FUNCAS」によると、スペインの未登録移民は2017年の約10万7,400人から2025年には約83万8,000人へと急増し、8倍近くに膨らんだ。背景には、コロンビアやペルー、ホンジュラスなど中南米諸国からの流入増加がある。人口約5,000万人のスペインでは、およそ50人に1人が不安定な在留地位に置かれている計算になる。
スペイン経済は堅調な成長を続けており、農業や観光、サービス、介護といった分野ではすでに移民労働者への依存度が高い。これらの産業はいずれも、現在のスペイン経済を支える重要な柱と位置づけられている。「欧州中央銀行(ECB)」も、外国人労働者の流入がスペインの労働力不足を緩和し、経済成長率の押し上げに寄与したとの分析を公表した。スペインの昨年の成長率は約3%に達する見通しで、ここ数年は欧州連合(EU)の主要国を上回る成果を示している。慢性的に高水準だった失業率も、2008年の金融危機以降で初めて10%を下回った。
「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」によると、移民たちは新型コロナウイルス感染拡大に伴う封鎖期間中、不安定な立場に置かれながらも、社会を維持するための必須労働を担ってきた。こうした経験を通じて、スペインの市民社会では「移民はすでに社会を支えているにもかかわらず、法的地位が与えられていない」という問題意識が強まったとされる。
2021年以降、移民団体や左派勢力、カトリック教会などが連携し、未登録移民の合法化を求める市民立法運動を展開してきた。その取り組みが、今回の措置として結実した形だ。専門家の間では、今回の合法化がスペインの労働市場や住宅市場に与える影響は限定的で、長期的には経済にプラスに働くとの見方が広がっている。新たな移民を呼び込む政策ではなく、すでに国内に居住している人々のみを対象としているためだ。政府も「合法化によって税収と社会保障への拠出が拡大し、成長と財政の安定につながる」という論理を前面に押し出している。
一方で、保守系野党は今回の移民合法化政策に強く反発している。保守系・国民党のアルベルト・ヌーニェス・フェイホー代表は、今回の合法化措置について「不法移民の流入を助長し、公共サービスが立ち行かなくなる」と批判した。また、極右政党「ボックス(VOX)」の報道官、ペパ・ミヤン氏は、この政策を「我々のアイデンティティへの攻撃だ」と位置づけ、憲法裁判所に提訴して阻止する方針を明らかにした。
米国では現在、移民取り締まりが暴力的な形で行われているとの批判が強まっており、欧州の主要国でも入国規制の強化や送還の拡大など、移民を抑制する政策が相次いでいる。こうした中で、スペインは「合法的な帰属」と「統合」を前面に掲げる、例外的ともいえる路線を歩んでいる。













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