
ロシア当局が、メッセージアプリ「テレグラム(Telegram)」の創設者であるパーヴェル・ドゥーロフ氏に対し、テロ支援の容疑で調査を開始したことが報じられている。これを受け、クレムリン(ロシア大統領府)がテレグラムを遮断するための口実作りに乗り出したとの見方が強まっている。
ロシア政府系紙「ロシースカヤ・ガゼータ」によると、ロシア連邦保安庁(FSB)が現在、ドゥーロフ氏をテロ支援容疑で捜査中だという。民間紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」も同様のニュースを報じ、テレグラムがウクライナや北大西洋条約機構(NATO)の情報機関による対ロシア活動に利用されているほか、ロシア軍将校の暗殺計画や武装勢力の活動に関与していたと伝えている。
これに対し、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は「報道にFSBの捜査資料が引用された」と述べ、事実上捜査の事実を認める形となった。FSBなどの当局はまだ公式な起訴を発表していないが、国家機関の資料が報じられたことは、世論形成や法的措置に向けた前段階と解釈できる。実際、ペスコフ氏はテレグラム遮断の可能性について明言を避けつつも、「安全保障当局が必要と判断する措置を講じる」と述べ、追加規制の可能性を示唆した。
テレグラムは個人間の暗号化メッセージと大規模な公開チャンネル機能を併せ持ち、過去10年間のロシアで事実上唯一生き残った「非統制型」プラットフォームだ。ロシア国内の月間アクティブユーザー(MAU)は1億人を超えると推定され、知事や市長、政府機関までもが政策発表やライブ配信に使用している。また、ウクライナ侵攻に投入された兵士たちも、その暗号化機能を通信に活用していることが知られている。
今回の捜査は、当局とドゥーロフ氏の対立が激化する中で始まった。ロシア政府は2月10日から、テレグラムが犯罪利用を十分に防止できていないとして、通信速度の低下など段階的な圧力を強めている。これは2022年の開戦以降、オンライン空間の統制を拡大してきた流れの延長線上にある。これまでロシアはフェイスブック(Facebook)やインスタグラム(Instagram)を遮断し、ユーザーを政府公認アプリ「Max」へ移行させようと画策してきた。
特に、ドゥーロフ氏が反戦の意向を示したことが、当局の集中的な圧力につながったとみられる。現在アラブ首長国連邦に居住する同氏は、かつてはロシア当局と一定の協力関係にあったが、開戦後は当局が要求する暗号キーの提供を拒否。これにより政権との関係は急速に悪化した。
ロシア政府はすでに「テレグラム潰し」ともいえる世論工作に乗り出している。先週末にはクレムリン関係者が国営放送でテレグラムのチャット内容が流出した経験を語ったほか、通信監督当局のロスコムナゾールは同アプリが規制を遵守していないと指摘。RIAノーボスチ通信は、情報削除義務の不履行などにより、最大6,400万ルーブル(約1億3,000万円)の罰金が科される可能性があると報じた。
政府によるテレグラム追放の試みはこれが初めてではない。2018年から2020年にかけても遮断を試みたが、技術的限界とユーザーの反発により失敗に終わった。今回は規制のレベルを刑事捜査にまで引き上げたことで、全面遮断に至る可能性が高まったとの見方が出ている。
ただし、ユーザーを政府公認アプリ「Max」に移行させる目論見が成功するかは不透明だ。「Max」は暗号化機能が脆弱で監視を受けやすいとの懸念が根強く、ユーザーからの反発は必至だ。プーチン大統領の側近である公正ロシア党のセルゲイ・ミロノフ党首でさえ、「当局は兵士とその家族の唯一の通信手段を奪おうとしている。愚か者だ」と一喝した。現場のドローン部隊指揮官からも、情報の共有が困難になることへの懸念が漏れている。
















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