
ドナルド・トランプ米大統領がいわゆる解放の日を宣言し、高関税政策を打ち出してから間もなく1年を迎える。数十年続いた自由貿易体制は大きく揺らぎ、米国と世界経済の関係も大きく変化した。一方で、トランプ氏が掲げた製造業の復活は、依然として明確な成果を示していないとの評価が出ている。
「ワシントン・ポスト」によると、トランプ大統領は昨年4月2日、相互関税の導入を発表し、「雇用と工場は米国に戻る」と強調した。しかし1年後の現在、米国の製造業雇用はむしろ減少し、物価は上昇したと同紙は指摘する。現在の製造業雇用は約1,260万人で、関税導入時より9万3,000人減少した。生産は約1%増加したものの、バイデン前政権時の水準にはまだ達していない。
「米供給管理協会(ISM)」の製造業購買担当者景気指数(PMI)では、製造業は2月まで2カ月連続で拡大を示した。ただ市場では、これは関税の効果というよりも人工知能(AI)関連需要の影響との見方もある。「EYパルテノン」のグレッグ・ダコ首席エコノミストは、「イラン戦争によるエネルギー価格上昇が続けば、製造業回復は再び鈍化する可能性がある」と警告した。
物価も上昇している。「米連邦準備制度理事会(Fed)」が重視する指標では、この1年でインフレ率は2.5%から3.1%へ上昇した。急激な上昇ではないものの、家計負担は確実に増している。一方、トランプ政権が関税の根拠としてきた慢性的な貿易赤字は10カ月連続で縮小した。関税収入も大幅に増え、年間3,000億ドル(約47兆9,000億円)規模に達する見通しだ。専門家は、この巨額の税収により、今後どの政権であってもトランプ型関税政策を簡単に撤廃することは難しいとみている。
■ 迷走する関税政策、企業投資を抑制
政策運営は混乱も伴った。強硬姿勢を示した後に後退するケースが相次ぎ、トランプ大統領にはTACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつも土壇場で退く)との皮肉も向けられた。
今年2月には、「連邦最高裁」が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を違憲と判断し、政権は政策の全面見直しと1,500億ドル(約23兆9,000億円)以上の関税還付を迫られた。その後、通商法122条を根拠に10%の一律関税を再導入。ホワイトハウスは7月の期限を前に、より恒久的な制度設計に向け新たな法的根拠を検討している。
こうした不確実性は企業の投資抑制につながっている。政策分析会社「キャップストーン」のアンドリュー・ギア氏は、「企業は関税政策を信頼していない。ある日存在しても翌日には消える可能性がある」と指摘し、「関税だけで大規模投資を呼び込むのは難しい」と述べた。
■ 再編進む世界貿易
それでも関税政策は世界経済の構造を大きく変えた。トランプ第1期で商務長官を務めたウィルバー・ロス氏は、「自由貿易という概念は事実上消えた」と指摘する。「欧州連合(EU)」は南米メルコスールとの協定を進め、インドとの交渉も加速。シンガポールやノルウェーなど16カ国は、米国が距離を置くルールベースの貿易体制を維持するため協力を強めている。米国も重要鉱物の国内供給網強化を進め、対外依存の低減を図っている。
関税は交渉カードとしての効果も発揮した。日本は米国の自動車安全基準を受け入れ、英国は牛肉輸入を拡大した。元米通商交渉官のウェンディ・カトラー氏は、「少なくとも第1ラウンドではトランプ政権が優位に立った」としつつ、「重要なのは合意より履行だ」と指摘した。
ただ、新たな国際貿易秩序の形は依然として見通せない。米中関係も流動的な状況が続いており、トランプ大統領と中国の習近平国家主席は5月に北京で会談する予定だ。最高裁がIEEPA関税を違法と判断した後も、トランプ政権は通商法122条を根拠に10%関税で対応している。より強力で恒久的な関税体制を構築できるのか、それとも再びTACO論争が浮上するのか。世界経済の行方を左右する重要な分岐点となっている。















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