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敵の戦争で得をしたのは中国だった、デフレ3年の苦しみを原油高が一掃

梶原圭介 アクセス  

引用:The White House
引用:The White House

米国とイスラエルによる対イラン軍事衝突が、中国経済にとって逆説的にバッファー(緩衝材)の役割を果たしているとの見方が出ている。衝突をきっかけに原油価格が上昇し、デフレ圧力が和らいだことで、中国人民銀行による追加利下げの負担が緩和されたとの分析だ。

ブルームバーグは8日(現地時間)、イランを巡る衝突を受けたエネルギー価格の上昇が、中国の消費者物価を押し上げる要因となり、デフレリスクを緩和させていると報じた。中国は新型コロナ禍後も主要国のような急激なインフレには見舞われず、むしろ内需の弱さや不動産不況の影響で、物価の低迷や下押し圧力が続いてきた。

実際、これまでの中国経済にとって最大の懸念は物価高ではなく、物価の低迷にあった。低すぎる物価は企業収益や投資意欲を損ない、家計の消費先送りも招きかねないため、政策当局にとっても重い課題となっていた。市場でも、人民銀行が追加利下げや流動性供給の拡大に動くとの見方が強まっていた。

ただ、中東での衝突以降は潮目が変わりつつある。原油高が輸入物価を押し上げ、消費者物価指数(CPI)を持ち上げる一方、生産者物価指数(PPI)の長引く下落も和らいでいるためだ。2月のCPIは前年同月比1.3%上昇と約3年ぶりの高い伸びを記録し、PPIも下落幅が縮小したことで、デフレ脱却への期待感が広がった。

市場では、物価が底を打って持ち直すリフレーション(再インフレ)の初期局面に入る可能性も取り沙汰されている。中国経済を悩ませてきたデフレ圧力が完全に払拭されたわけではないものの、少なくとも一段の下落リスクからは距離を置きつつあるとの受け止めが出ている。

こうした変化は、金融政策の見通しにも直接影響している。金利スワップ市場では人民銀行の追加利下げ観測が顕著に後退し、一部の投資銀行も従来の緩和シナリオを修正した。バンク・オブ・アメリカは、今年のCPI上昇率見通しを従来の0.1%から0.7%へ引き上げ、PPIも小幅なプラス転換を予想している。

政策当局の動きにも変化が表れている。人民銀行は3月、公開市場操作を通じて金融システムから流動性を純吸収した。景気下支えのために資金供給を拡大してきたこれまでの流れとは対照的で、物価や金融環境の変化を踏まえ、政策の強度を調整し始めた意図があるとみられる。人民銀行は、事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR)も据え置き、様子見姿勢を保っている。

債券市場にもその空気は反映されている。中国国債の5年物と30年物の利回り格差は、足元で約4年ぶりの高水準に拡大した。長期金利が相対的に速いペースで上昇し、インフレ期待が織り込まれた結果であり、市場が利下げの可能性を低く見積もっていることを示している。

これは、中国の金融政策が世界の潮流に徐々に歩調を合わせ始めた兆候でもある。米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに慎重な姿勢を崩さず、欧州連合(EU)でもインフレ警戒が続くなか、中国も過度な緩和より政策余地の温存へ軸足を移しつつあるとの分析が出ている。

もっとも、今回の変化をすべて中東情勢の追い風とみるのは早計だ。中国政府は企業による過度な値下げ競争を抑え、産業構造の改善を促す政策も並行して進めてきた。工業企業の利益は改善に向かい、今年1~2月も前年同期比15%増と回復基調を示した。不動産市場も急落局面を経て、一部地域では安定の兆しが指摘されている。

それでも、中東情勢という外部要因が、タイミングとして中国経済に有利に働いたとの評価は少なくない。デフレ圧力を和らげると同時に、政策運営の選択肢を広げたためだ。ブルームバーグは、今回の衝突が中国の中央銀行に対し、情勢を見極める猶予を与えたと伝えた。

ただ、不確実性が消えたわけではない。衝突が長期化したり、世界経済の減速につながったりすれば、中国も輸出の鈍化や成長下振れ圧力を避けにくくなる。とりわけ中国は原油輸入への依存度が高く、中東との交易規模も大きいだけに、地政学リスクが再び高まれば負の影響が表面化する可能性がある。

結局のところ、今回の変化は中国経済が構造的に反発したというより、外部環境による一時的な緩衝効果の色合いが濃い。物価の持ち直しが続くか、あるいは金融政策が実際に方向転換へ向かうかは、今後のエネルギー価格と世界経済の動向に左右されそうだ。

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