
米国とイランによる2週間の停戦合意により、ホルムズ海峡の通航は一時的に再開された。しかし、実質的な安全確保の見通しは立たず、情勢は依然として不透明なままだ。こうした中、高市早苗首相はナフサ供給への懸念を払拭するため、国内需要の4か月分を確保していると説明した。しかし、中東依存度の高い石油化学業界ではすでに減産の動きが広がっており、サプライチェーンの混乱は実産業に深刻な影を落としている。
ナフサは原油の精製過程で得られる「石油化学の基礎原料」であり、熱分解によってエチレンやベンゼンなどの基礎化学品を生み出す。これらはさらにポリエチレン、合成ゴム、ポリエステルなどへと加工され、プラスチック、ゴム、電子部品、繊維といった最終製品に至る「産業のコメ」とも言える重要な存在だ。
日本のナフサ供給は、国内生産が40%、輸入が60%で構成されるが、輸入分のうちアラブ首長国連邦やクウェートなど中東産が7割を占める。国内製油所で精製される原油の9割も中東産であることを踏まえると、実情としての依存度は極めて高い。ホルムズ海峡の緊張を受け、3月から三井化学など主要メーカーがエチレンの減産に踏み切った。石油化学工業協会の工藤幸四郎会長は会見で「生産現場の稼働停止は何としても回避しなければならない」と述べ、強い危機感を表明した。
「4か月分」の内訳と、業界が抱く楽観視できない現実 高市首相は5日、自身のSNSで「6月のナフサ供給不能」とする一部報道に対し、国内需要の最低4か月分を確保していると釈明した。政府の説明によれば、この数字はナフサ単体の現物備蓄ではなく、海外調達分(2か月)、国内製油所の生産分、さらにポリエチレンなど化学中間製品の在庫(2か月)を合算した推計値だという。
しかし、業界に楽観論はない。イラン紛争勃発後、ナフサ価格は66%以上も高騰。国内に12基あるエチレンクラッカーのうち、少なくとも半数の6基が減産体制に入った。三菱ケミカル、三井化学、出光興産が相次いで生産を縮小し、信越化学工業もエチレン調達の制約から供給の先行きは不透明だとしている。これに伴い、塩化ビニル樹脂(PVC)価格も20%上昇した。
政府が示す「4か月分の確保」には、備蓄原油の放出や代替調達も織り込まれているが、石油化学業界内では「抜本的な解決策とは言い難い」との見方が強い。2週間の停戦後に再び海峡が封鎖され、事態が長期化すれば、プラスチックや自動車産業のサプライチェーンに連鎖的な打撃が及ぶ恐れがある。すでにトヨタに続き、日産も1,200台の減産を決定した。
この影響は、中東依存が高い韓国などの近隣諸国にも及びかねない懸念材料だ。ホルムズ海峡を巡る混乱は、北東アジア全体の石油化学サプライチェーンを直撃し、日韓両国の産業構造再編を加速させる決定的な要因となりつつある。
















コメント0