南極で数百件に及ぶ「氷河地震(グレーシャー・クエイク)」が発生していたことが、最新の研究で明らかになった。「ザ・カンバセーション」や「ライブサイエンス」など海外メディアが報じ、研究成果は科学誌「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」に掲載された。
オーストラリア国立大学の研究チームによると、観測された氷河地震の大半は、南極半島西側に位置するスウェイツ氷河の海岸付近で発生していた。スウェイツ氷河は、崩壊すれば世界の海面水位を大幅に押し上げる可能性があることから、「終末の氷河(ドゥームズデイ・グレーシャー)」とも呼ばれている。
氷河地震とは、氷河が移動したり崩壊したりする過程で発生する特殊な地震現象だ。主に、背の高く細長い氷山が氷河の先端から海へ落下する際や、大型氷山が崩落して氷河本体と衝突することで強い地震波が生じる。この地震波は、発生地点から数千キロ離れた地域まで伝わることもある。
氷河地震の特徴として、通常の地震と異なり、高周波の地震波がほとんど発生しない点が挙げられる。高周波地震波は、断層のずれや火山活動、核実験といった一般的な地震源の検出や位置特定に重要な役割を果たす。この違いにより、通常の地震は数十年前から継続的に観測されてきた一方、氷河地震は比較的最近になって本格的に検知されるようになった。

北極と南極では氷河地震の性質が異なる
これまでに観測された氷河地震の多くは、北半球最大の氷床を持つグリーンランドで発生してきた。グリーンランドの氷河地震は比較的規模が大きく、晩夏に発生頻度が高まる傾向があり、近年は発生件数も増加している。研究チームは、こうした変化が極域で加速する地球温暖化と関連している可能性を指摘している。
一方、南極での氷河地震については、これまで明確な証拠がほとんど確認されていなかった。しかし今回、南極に新設された地震観測所のデータを分析した結果、360件を超える氷河地震が新たに確認された。観測された地震は、スウェイツ氷河およびパインアイランド氷河の周辺に集中しており、いずれも南極大陸の中でも海面上昇への影響が特に大きい地域とされている。

南極氷河地震の特徴と未解明の要因
スウェイツ氷河は、完全に崩壊した場合、世界の海面を約3メートル押し上げる可能性があるとされている。今回確認された地震のうち、約3分の2にあたる245件は、スウェイツ海峡近くの海岸線周辺で発生していた。
ただし研究チームは、これらの地震の主因が単純な気温上昇だけではないと分析している。氷河地震が最も頻発した2018年から2020年は、氷河の先端から海へ突き出した「氷舌(ひょうぜつ)」が急速に移動していた時期と一致しており、この加速は衛星観測でも確認されている。研究チームは、海洋環境の変化が関与している可能性が高いとしつつも、正確な原因はまだ特定されていないとした。
2番目に多くの地震が観測されたのは、パインアイランド氷河周辺だった。これらの地震はすべて海岸線から60〜80キロ離れた内陸部で発生しており、氷山が海へ落下した際に起きる現象とは考えにくいという。そのため、発生メカニズムはいまだ解明されておらず、今後の研究課題として残されている。
研究チームは、南極における氷河地震の理解を深めることが、今後数世紀にわたって予測される海面上昇の不確実性を減らす上で、重要な手がかりになると強調している。













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