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がんに“自殺命令”を下す時代へ…米バイオベンチャーが開発した「治療ではなく制御」の新技術とは?

竹内智子 アクセス  

「がんに命令する時代が来た」“治療の常識”を変える米ベンチャーEarli、その武器は合成DNA

引用:アーリ
引用:アーリ

「がんを追いかけ、治療法を探し回る時代は終わった。これからは我々ががんを制御する」

そう語るのは、米バイオテック企業Earli(アーリ)のCEO、シリアック・ローディング氏だ。

アーリは、がん細胞に人工的に命令を与えることで、診断から治療までを一貫して実現しようとする企業。がん細胞のみに反応する合成DNAを脂質ナノ粒子(LNP)に包み、標的部位で特定タンパク質を生成させる技術を開発している。

通常、がんは共通のバイオマーカーを持たないため、薬剤が全員に効くわけではない。キイトルーダのような世界的ヒット薬でも、効果があるのは30〜40%程度にとどまる。ローディング氏は「ならば、自然のバイオマーカーを探すのではなく、人工的に作ればいい」と発想を転換した。

この構想の起点には、スタンフォード大学の故サム・ガンビア博士との出会いがあった。16歳の息子をがんで亡くしたガンビア博士に連絡を取ったローディング氏は、毎週土曜の朝、キッチンのテーブルで技術と生命科学について議論し、Earliの原型を形作っていった。

アーリが開発した合成DNAは、がん細胞の内部に入って初めて機能を発動。がん細胞を「タンパク質製造工場」に変え、IL-2やIL-12といった体内の免疫反応を高めるタンパク質を生成させる。これにより、正常細胞に害を与えず、副作用リスクを極限まで抑えながら治療効果を引き出せるという。

AIによる学習とマウスモデルでの改良により、合成DNA構造体の正確度は初期の13%から98%へと飛躍的に向上した。実験では、治療後に腫瘍が完全に消失し、T細胞の活性も長期間維持された。

現在、アーリは肺がん、肝がん、膀胱がんを主な標的としており、18カ月以内に初の臨床試験を開始予定。2027年初頭に第1相、2028年に第2相、2029年に第3相の完了を目指している。順調に進めば、2030年から患者への提供が視野に入る。

技術が進化するたびに、がんという病の輪郭が少しずつ変わりつつある。「治療」ではなく「制御」へ。アーリのアプローチは、がんとの関係を根底から変える可能性を秘めている。まだ始まりに過ぎないその技術が、次の時代の医療のスタンダードとなる日は、そう遠くないかもしれない。

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