
今年に入り、中東からアジア向けの原油輸送費が5倍以上に急騰している。米国とイランの軍事衝突リスクが高まる中、世界の原油輸入業者がチャーター契約を急いだことに加え、インドや中国による輸入拡大が影響した。今後の運賃は、現在進行中の米イラン協議の成否に大きく左右される見通しだ。
■ 運賃は6年ぶりの最高値圏へ
26日、「ロンドン証券取引所グループ(LSEG)」のデータによると、中東から日本などアジア諸国に向かう超大型原油運搬船(VLCC)の1日あたりの運賃は、24日に17万6,357ドル(約2,750万円)を記録。年初の1月3日(3万951ドル=約480万円)から469%も上昇し、2020年4月以来の最高値を更新した。
グローバル海運分析会社「ケイプラー(Kpler)」によれば、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、イランなど中東諸国の原油輸出量は今月、1日あたり1,900万バレルを超え、こちらも2020年4月以降で最高水準となっている。
背景には、地政学的リスクに伴う供給不安がある。世界の海上輸送原油の20%以上が通過するホルムズ海峡の封鎖懸念から、市場参加者が運賃のさらなる上昇や航路封鎖に備え、船舶の先行確保に動いたためだ。船舶仲介大手「クラークソン(Clarkson)」は、「リスクを運賃に反映させる速度が前例のないほど早い」と指摘している。
■ インド・中国の需要シフトも要因
インドと中国による中東原油の輸入増加も、運賃を押し上げる要因となっている。インドは米国の圧力を受け、これまで安価に購入していたロシア産原油の輸入を中止。その代替として中東産の調達を急拡大しており、先月は中東の総生産量の5割以上をインドが輸入した。
スイスの原油取引専門会社「スパルタ・コモディティーズ」のジューン・ゴー首席アナリストは、「OPECプラスの動向やロシア産から中東産へのシフトなど、複数の要因が複雑に絡み合っている」と分析する。
■ 米国・イラン協議が最大の焦点
今後のVLCC運賃の行方は、26日(現地時間)にスイスのジュネーブで開かれる米国とイランの高官級協議にかかっている。トランプ米大統領は15日間の猶予という「最後通告」をしており、今回の会談が事実上、軍事行動を回避するための最後の外交機会となる可能性が高い。
米国側は交渉を優位に進めるべく、25日にはイラン産原油の輸送に関与した「シャドー艦隊(影の船団)」に対する新たな制裁を発表。外堀を埋める構えを見せている。
協議が劇的に妥結し、軍事衝突の懸念が解消されれば、運賃に含まれる「戦争リスクプレミアム」は急速に剥落し、1日あたり6万〜8万ドル程度まで沈静化すると予想される。一方で、協議が決裂しイランがホルムズ海峡での挑発行動に出る「最悪のシナリオ」が現実化すれば、パンデミック初期の最高値(20万ドル以上)を突破する恐れもある。
















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