
米国とイスラエルによる空爆で始まった対イラン軍事作戦「エピック・フューリー」が長期化する中、米国の安全保障戦略が劇的な変容を遂げている。インド太平洋地域で中国を牽制していた米軍戦力が相次いで中東へ転用されたことで、アジアの安全保障構造に重大な空白が生じているとの指摘が出ている。
14日(現地時間)、「Wall Street Journal(WSJ)」や「The New York Times(NYT)」など米主要メディアが報じたところによると、トランプ政権は先月の作戦開始以降、インド太平洋地域に展開していた軍事資源を中東に再配置した。トランプ政権当局者によれば、ピート・ヘグセス国防長官は米中央軍(CENTCOM)の要請を承認し、長崎県・佐世保基地を母港とする強襲揚陸艦「トリポリ」を含む揚陸即応群(ARG)と第31海兵遠征部隊(31MEU)を中東に派遣した。NYTは、約2,500名の海兵隊員がインド太平洋地域から移動し、現地に展開する約5万名の米軍部隊に合流する見込みだと伝えた。
さらに米軍は、アジア地域に配備していたパトリオット・ミサイルやTHAAD(高高度防衛ミサイル)の一部迎撃資産、南シナ海に展開していた空母打撃群なども中東へ移動させたとされる。こうした大規模な戦力移動は、米国の安全保障戦略の要であった「インド太平洋重視」の姿勢が、イラン情勢の緊迫化を契機に揺らいでいることを示唆している。
これまで米国は、中国の軍事的・経済的台頭を牽制するため、外交・軍事資源をインド太平洋地域に集中させてきた。日本やオーストラリア、フィリピンなどの同盟国との協力を強化し、南シナ海や台湾海峡でのプレゼンスを維持してきたが、現在の戦力集結はアジアの同盟国間に「米国の安全保障公約が形骸化するのではないか」との懸念を広げている。
「ロイター通信」によれば、日本政府は自国に配備された米軍資産を他地域へ無断で転用しないよう、米国側に保証を求めているという。台湾においても、米国が中東に注力する「隙」を突き、中国が威圧的な行動を強める可能性に強い警戒感を示している。バイデン政権時代に国防次官補(インド太平洋安全保障担当)を務めたイーライ・ラトナー氏は、アジアからの防空資産の引き抜きは、トランプ政権の戦略を不安視する同盟国に対し、極めて不適切なシグナルを送ることになると警鐘を鳴らした。
こうした米国の影響力低下は、中国側の主張を後押しする結果となっている。中国の官営紙「China Daily」は、中東の紛争に深入りする米国の姿を風刺画で揶揄し、戦略的優位を強調している。また、アジア諸国が以前ほど米国の軍事支援を期待できなくなれば、地域内での軍備競争が加速する恐れもある。日本においては、武器購入契約から5年以上が経過しても納入されていない米国製兵器が118件(契約規模:約72億ドル)に上っており、米国の供給能力に対する懸念も顕在化している。
















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