
仲裁者を自任する中国
イラン戦争勃発後、中国は国内外で早急な停戦と対話による平和的解決を強調する一方、中東・欧州諸国との緊密な外交的意思疎通を通じて、中東の平和実現に向けた共感の形成に取り組んだ。
中国は3月初めから外交部の報道官の記者会見を通じて、米国とイスラエルによるイラン攻撃は国連安全保障理事会の承認を受けておらず、国際法に違反していると指摘し、大規模な民間人犠牲を招いたとして両国の軍事行動を非難した。
翟隽(ジャイ・ジュン)中東担当特使は3月中旬に複数の中東諸国を訪問し、軍事作戦の中止と対話再開を促した。王毅外相も、イラン・イスラエルのみならず、ロシア、フランス、エジプト、サウジアラビアなど関係国と積極的に意思疎通を図り、イラン戦争に対する中国の立場を伝えつつ、中東の平和実現に向けた共感の醸成に努めた。
特に中国は3月31日、パキスタンと共に、敵対行為の即時中止、早期の平和会談開催、非軍事施設の安全確保、航路の安定確保、国連憲章の優先遵守を柱とする「湾岸・中東地域の平和と安定回復に向けた5項目提案」を発表した。
4月8日、パキスタンの仲介により米国とイランが2週間の停戦に合意し、この過程で中国がイランに仲介案の受け入れを強く求めていたことが報道を通じて明らかになった。
暫定的な停戦であるため、今後の戦況は依然として不確実だが、今回の事態を契機に中国は仲裁外交を展開し、国際社会における大国としての存在感を示した。停戦のもとで米国とイランが和平交渉に入り、終戦で合意すれば、2023年のサウジアラビア・イラン国交正常化仲介に続き、中国の仲裁外交が再び脚光を浴び、中国の影響力拡大につながる可能性がある。
こうした一連の外交的動きは、単なる平和の呼びかけにとどまらず、中東の安定回復を通じた核心利益の保護、米国と差別化された「責任ある大国」としての地位向上、米中関係の管理という複合的な思惑に基づくものとみられる。
中東の安定と中国の核心利益
中国にとって中東はエネルギー安全保障と一帯一路推進に非常に重要な戦略的価値を持つ。なかでもイランはアジアと欧州、ユーラシアとアフリカを結ぶ地理的要衝であり、主要なエネルギー供給源でもある。中国は米国の対イラン制裁局面においてもイランとの協力関係を維持しており、イラン産原油の80%超を輸入することで、イランを間接的に支えてきた。
現在、中国は備蓄油の確保、ロシア産原油の輸入拡大、原油調達先の多様化、再生可能エネルギーの開発などを通じて、国際原油価格急騰の影響をある程度緩和できる態勢を整えているようだ。
例えば、2026年初め時点で13億バレルの備蓄油を確保しており、2026年1月・2月にはロシア産原油の輸入を前年同期比約40%増加させた。それでもなお、安定したエネルギー供給網の確保は依然として中国にとって極めて重要な課題である。
中国は2021年にイランと締結した「25年包括的戦略協力協定」に基づき、イランからバレル当たり5〜10ドル安く原油を調達してきた。中国の海上原油輸入全体においてイラン産が13.4%を占めており、全輸入原油の42%が中東産だ。
その点でホルムズ海峡の封鎖状況は、中国の原油輸入に打撃を与えざるを得ない。今年第15次五カ年計画を開始する中国は、製造業の質的成長、高度技術の自立、民生改善、経済回復を推進しなければならない状況にある。ホルムズ海峡の封鎖のような突発的な事態は、中国のエネルギー供給網と物流網に直接打撃を与える恐れがあり、中国経済のみならず、習近平指導部の政治的安定にも影響を及ぼしかねない。中国の仲裁外交は平和を説く外見を持ちながらも、その実態には極めて現実的な利害計算が働いている。
アメリカと差別化を図り「責任ある大国」の地位向上を狙う
米国とイスラエルの一方的な軍事行動、ホルムズ海峡封鎖による原油価格急騰、戦争拡大への懸念から、トランプ政権に対する不満と不信が国際社会に徐々に広がっている。米国と競争する中国の観点から、こうした状況は米国との差別化を鮮明にし、自国の地位を高め、グローバルな影響力を拡大する機会と判断されているとみられる。
すでに中国は、米中戦略競争の構図のなかで「グローバル・ガバナンス・イニシアティブ」など様々なグローバルな言説を通じて大国の役割と責任を強調し、自国の立場を強化しようとする姿勢をみせてきた。
西側の一部では、中国が示した5項目提案が原則的な内容にとどまり、具体的な実行計画に乏しい点で実効性が低いと評価されることもある。実際、ロシア・ウクライナ戦争1周年を機に中国が発表した「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」が結局何の成果も上げられなかったため、今回も中国が直接介入せず、原則論を繰り返すにとどまっていることへの疑問が呈された。
しかし、イラン戦争が長期化し、トランプ政権の一方的で予測不可能な政策への批判が高まるなか、中国のメッセージが反射利益を得ている。原則的な内容であっても、国連憲章と国際法に基づいて米国とイスラエルの軍事行動を批判し、紛争終結を促す姿勢が、戦争への疲弊が広がる国際世論のなかで、相対的に責任ある姿勢として映っているためとみられる。
中国がフランス、ドイツなど欧州諸国とも意思疎通を図り、平和的解決に向けた共感を模索している点は注目される。米国が同盟国にホルムズ海峡の制御に関する軍事協力を要請したのに対し、3月19日、英国・フランス・ドイツ・日本などはホルムズ海峡封鎖を非難しつつも、軍事作戦への不参加を表明した。
イラン戦争をめぐって米国と同盟国間の意見の不一致が生じるなか、中国が国連憲章と国際法の遵守を強調し、欧州諸国との外交的接点を広げることは、今後の対中牽制の場面における米国の同盟国・協力国の結束を緩和する方向に働く可能性がある。
中東・グローバルサウスにおける中国の政治的影響力が拡大する可能性も高まっている。2021年にアフガニスタンに駐留していた米軍の突然の撤退によりタリバン政権が再び権力を握り、中東諸国の対米不信と安全面への不安が高まった。こうした雰囲気のなかで2023年の中国によるサウジアラビア・イラン国交正常化仲介は、中国が地域の平和と安定のために努力する建設的な役割を担う存在との認識を中東諸国の間で強化する契機となった。
今回の戦争で中東諸国が直接的な被害と安全上の不安を経験しているなか、米国と完全に決別するまでには至らずとも、対米不信・不満が中東地域に広がる可能性がある。この文脈で中国の仲裁外交が戦争の緩和と終結に一定の寄与をするならば、中東における中国の政治的影響力拡大は、エネルギー安全保障と一帯一路推進の安定化につながるとみられる。
さらに、グローバルサウスに対して中国が米国との差別化を打ち出し、みずからの責任と役割を強調することで、経済分野を超えた政治・外交分野での協力関係の拡大にも有利に働くだろう。
米中直接衝突を回避する中国
中国は国際法を根拠に米国とイスラエルの一方的な軍事行動を批判しているが、米国への直接的な非難と攻勢は一定の範囲に抑えている。パキスタンと共に5項目提案を発表したものの、仲裁の前面に出るのではなく、パキスタンの仲裁役を支持する形をとり、米国とイラン間の交渉を見守る態度を示している。5月に予定されている米中首脳会談を考慮すると、こうした中国の行動は、米国を不必要に刺激せずに外交的立場を確保しようとする意図として解釈される。
2025年10月30日に開催された米中首脳会談で、中国は米国産大豆の輸入とレアアース輸出制限の猶予を条件に、米国の対中関税引き下げを獲得した。米中対立が根本的に解決されないまま1年間の戦略的休戦状態となったが、これを契機に中国は米国の対中圧力を乗り越えたとして、米中関係において自信をのぞかせた。
今年、複数回の米中首脳間会合が予定されているなか、中国は対立より妥協と協力を重視する姿勢を米国に継続的に発信している。中間選挙を控えたトランプ大統領が外交的成果を求めて中国と取引に動く可能性が高いと判断しているようだ。
米国が2025年12月に国家安全保障戦略において中国牽制のため日本など地域内同盟の役割と貢献の拡大を求めたが、イラン戦争の行方によっては、インド太平洋地域での米国の対中圧力の強度と戦略的集中度が調整される可能性がある。
米国が配備していたTHAADミサイルの一部を中東に再配備し、インド太平洋地域にあった空母エイブラハム・リンカーンも中東方面へ移動させるなど、軍事資産をさらに中東に投入している。中国はこうした状況を好機ととらえ、米中関係での妥協と取引を模索することで、体制を立て直そうとしているとみられる。
















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