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「64PSで376万円!?」マツダAZ-1、米国で証明した日本の軽スポーツの値段

山田雅彦 アクセス  

軽スポーツカー「オートザムAZ-1」、米オークションで約370万円の高値 いまも色褪せない価値の背景

引用:Cars & Bids
引用:Cars & Bids

64PSしかない車が約370万円で売れたと聞いて、にわかには信じがたいだろう。驚くべきことに、これは実際に米国のオークションサイト「Cars & Bids」で起きた出来事だ。落札されたのは1992年式のオートザムAZ-1で、排気量657cc、最高出力64PSという小排気量モデルだ。

約370万円は、マツダ ロードスターが購入できる金額だ。合理的な買い物とは言えないかもしれないが、驚くべきことに、同車は米国内のオークションプラットフォームに出るたびに安定して同水準の価格を形成している。排気量も、出力も、サイズも小さいオートザムAZ-1。なぜいまなおコレクターを魅了し続けるのか。

引用:Cars & Bids
引用:Cars & Bids

厳格な規定が生んだ軽スポーツカー、AZ-1

AZ-1が誕生した1992年は、日本の自動車産業の黄金期だった。各社が「軽自動車規格」という制約の中で競い合うように個性的な車を送り出していた時代で、全長3.3m以下、排気量660cc以下、最高出力64PS以下という枠の中でいかに個性を絞り出すかが問われていた。

この時期、ホンダはビートを、スズキはカプチーノを投入した。マツダはサブブランドの「オートザム」を通じてAZ-1を発売し、実際の生産はスズキが担当した。

外観はイタリアのスーパーカーを思わせるプロポーションで、極限まで低く設計されたボディ、ミッドシップエンジンレイアウト、そして上方に開くガルウィングドアを備えていた。軽自動車規格の枠内にあるとは思えないほど、規制を意に介さないかのようなデザインだった。日本の軽自動車が最も創造的だった時代の集大成が、AZ-1だったといえるだろう。

引用:Cars & Bids
引用:Cars & Bids

小さなボディに詰め込んだスペック

リアハッチの下には657cc直列3気筒ターボエンジンが搭載されている。最高出力64PS、最大トルク8.7kgf·m(85Nm)。当時の自主規制上限64PSに対し、まさにその限界まで引き出した結果だ。スペックだけを見ればスーパーカーには程遠い。

0-96km/h加速は約10秒。しかし、車両重量はわずか720kgで、5速マニュアルトランスミッションとミッドシップレイアウトの組み合わせにより、実際の走りは数値以上だという評価が多い。軽量かつ重量配分に優れていれば、絶対的なパワーが低くても走りに大きな違いが生まれる。AZ-1がスペック以上の走りを持つと語り継がれる理由がここにある。

引用:Cars & Bids
引用:Cars & Bids

完璧なコンディションではなくとも高値を維持する理由

1995年の生産終了までに、AZ-1の総生産台数は4,400台に満たない。現在流通している個体数が限られることを意味する。今回のオークションに出た車両は走行距離約54,000km、14インチホイール、社外製のメーターおよびシフトノブ、ソニー製のカーオーディオユニットといったカスタムが施されており、販売者はステアリングホイールの状態が良くないと説明していた。

完璧な純正コンディションではなかったが、最終的に約376万円で落札が成立した。希少性、視覚的なインパクト、そして1990年代の軽スポーツ黄金期の象徴としての価値が重なった結果といえる。コレクター市場における希少性が価格を形成する好例だ。

引用:Mazda
引用:Mazda

AZ-1が今も持つ価値とは何か

車両重量720kgのガルウィングドアを備えたミニチュアスーパーカー、AZ-1は、規制という制約の中でいかに自由で創造的な車が作れるかを示したモデルだ。だからこそ、存在しているだけで確かな価値を持つ。現在の自動車市場は、むしろ正反対の方向へと向かっているからだ。

規制は排出ガスと安全基準を軸に再編され、車体は大型化が進んでいる。こうした流れの中で、AZ-1のような車が再び生まれることは事実上不可能に近い。30年の時を経てなお、マツダ ロードスターに匹敵する価格で取引されているという事実は、当時の日本の自動車産業が規制の中でいかに創意工夫を発揮したか、その記憶が市場でいまも生きていることを示している。

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