「敵より先に味方の首を絞めた」トランプ、高関税で“日韓を追い込み”中国が利する皮肉

米国のニコラス・バーンズ元駐中国大使は15日、米国のドナルド・トランプ大統領が台湾問題を巡り、中国の習近平国家主席に対して極めて弱い姿勢を見せていると指摘し、「今は曖昧な態度を取るべき時ではない。習近平国家主席がトランプ大統領を『弱い人物』と見なしているのではないかと懸念している」と述べた。バーンズ元大使は同日、米コロラド州アスペンで開かれたアスペン安全保障フォーラム(ASF)の中国関連セッションにパネリストとして出席し、「過去50年間、台湾に防衛用兵器を提供すべきかどうかを中国本土と交渉した米大統領は一人もいない」「台湾問題について交渉していると明かしたことは、大きな戦術的ミスだ」と語った。
トランプ大統領は5月、北京で行われた米中会談の直後、台湾への武器売却を中国との貿易・外交交渉に利用する「交渉カード(chip)」と表現し、少なからぬ波紋が広がった。米中の関税交渉が続くなか、米政府は現在、台湾に対する120億ドル(約1兆9,500億円)相当の武器売却承認を保留している。
バーンズ元大使は、米中両国が「人工知能(AI)、量子スーパーコンピューター、合成生物学、サイバー、宇宙、さらにそのほかのあらゆる分野で激しい競争相手(fierce competitors)になる」との見方を示した。さらに、中国が戦略的計画の一環として台湾に具体的な脅威を加えている以上、今は曖昧な態度を取る時ではないとしたうえで、「台湾問題を中国と交渉するさまざまな議題にむやみに組み込むのは不適切だ」と批判している。トランプ大統領が主要企業の経営者らを伴って中国を訪問し、「習近平国家主席を心から尊敬している」と述べたにもかかわらず、習近平国家主席はこうした好意に「応えなかった」とも主張した。
バーンズ元大使は特に、インド太平洋地域の同盟国である日本、韓国、インドを名指しし、「高い関税を課したことで、これらの国々を政治的に一層難しい立場に追い込んだ」と批判した。そのうえで、「中国との激しい競争で米国側に立つ民主主義国と共に行動すれば、米国は強くなる。そうしなければ弱くなる」と強調している。
日本の高市早苗首相が2025年11月、台湾有事の際に介入する可能性に言及し、この問題が日中対立へ発展するなか、バーンズ元大使は「トランプ大統領が、中国の威圧に立ち向かう日本とフィリピンの両政府について沈黙している」とも問題視した。中国問題の専門家で、バイデン政権で米商務省顧問を務めたスタンフォード大学フーバー研究所のエリザベス・エコノミー上級研究員は、「中国は重要鉱物やレアアースに対する支配力を利用し、『首を絞める』戦略で関税措置に反撃した」と説明し、「米国が一歩後退せざるを得なくなったのは、相対的な貿易比重を正しく理解していなかったためであり、極めて重大な戦略的ミスだった」と述べた。
「メモリー分野で中核を担う韓国など同盟国との協力が必要」
AI企業アンソロピックで、政府とAI産業をつなぐ国家安全保障政策を統括するタルン・チャブラ国家安全保障政策責任者は、「米国が中国に対する優位を維持できるかどうかは、強力な輸出規制を継続できるかにかかっている」と述べた。続けて、「そのためには、日本やオランダに加え、メモリー分野で中核的な役割を担う韓国や台湾など、同盟国・パートナーとの協力が必要だ」と強調している。
チャブラ責任者は、バイデン政権のホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)で技術・国家安全保障担当の上級補佐官を務め、主要政策を設計した人物でもある。チャブラ責任者は「中国のほぼすべての主要研究所が、アンソロピックだけでなく米国の競合企業のモデルから、知的財産やコーディング能力、エージェント能力などを抽出する『敵対的蒸留(adversarial distillation)』を進めている」と指摘した。そのうえで、「これを防げれば、現在6~9か月程度とされる技術格差を12~18か月程度に広げられる」と主張している。
☞アスペン研究所(Aspen Institute)
米国の実業家ウォルター・ペプケ氏が1949年、コロラド州アスペンに設立した非営利団体である。シカゴ出身のペプケ氏がアスペンの自然景観に感銘を受け、世界の指導者たちが日常を離れて議論する場を構想したことがきっかけだった。
「対話とリーダーシップを通じ、米国と世界が直面する最も重要な課題の解決を目指す」ことを運営理念に掲げている。政治的対立から一歩距離を置き、多様な人々が集まって議論できる場を設ける超党派の主催者を目指す。経済、教育、環境など30余りの分野で各プログラムが独立して運営されており、2010年からは世界各国の外交・安全保障専門家が国内外の問題を議論する「アスペン安全保障フォーラム」を毎年開催してきた。















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