英紙「昨年のイスラエル攻撃で生命の危機を実感、政権発足後最大の危機」
家族・側近を連れて逃避計画を準備

昨年12月28日以降、深刻な経済難に抗議する大規模な反政府デモが続く神権国家イランで、最高指導者のアリ・ハメネイ師(87)がデモ鎮圧に失敗した場合に備えロシアなどへの亡命を準備していると、英紙ザ・タイムズが4日に報じた。昨年6月、イスラエルとの「12日間戦争」で事実上敗北した後、高齢のハメネイ師は精神面・身体面の脆弱さを増し、生存への不安が強まったとされ1989年の就任以来、最大の危機に直面しているとの見方が出ている。
反西側姿勢を強めるウラジーミル・プーチン・ロシア大統領は、反米色の強い人物を受け入れてきた。シリアを強権統治していたが2024年12月に失脚したバッシャール・アル=アサド・シリア前大統領も、現在はモスクワ周辺で逃避生活を続けているとされる。2013年に米国家安全保障局(NSA)の不正監視を告発したエドワード・スノーデン氏もロシアへ逃れた後に帰化している。
一方、ドナルド・トランプ米大統領はイラン当局がデモを流血で鎮圧すれば「米国が救出する」と繰り返し警告してきた。3日に軍事作戦でニコラス・マドゥロ・ベネズエラ大統領を排除した米国がイランの体制転換を試みる可能性も排除できないとの見方がある。
「イスラエルとの戦争後、生存への執着」
ザ・タイムズはイランおよび西側主要国の情報報告を引用し、ハメネイ師が息子モジュタバ氏らごく少数の家族・側近を伴って逃避する計画を整えたと伝えた。安全な移動に向け、海外資産や不動産、現金の確保も含まれているという。
ハメネイ師は昨年6月、イスラエルの標的空爆で革命防衛隊の高官らが相次ぎ殺害された後、生命の危機を強く意識し始めたとされる。当時もハメネイ師は秘密の地下施設に身を潜め、限られた側近としか接触しなかったという。長期政権を維持するプーチン大統領への敬意から、モスクワへの逃避が有力視されるとも付け加えられている。
ハメネイ師は複数の国有企業を管轄する秘密組織「セタド(Setad)」の資金を、事実上の私的資金のように用いてきたとされる。ロイター通信によれば、セタドの資産は少なくとも950億ドル(約14兆8,608億2,408万2,128円)に上るという。西側の各種制裁下でもセタドを活用すれば、ハメネイ師が国外逃避資金を調達するのは難しくないと見られる。
ハメネイ師は1939年、シーア派の聖地であり首都テヘラン、イスファハンに次ぐ第3の都市マシュハドで生まれ、聖職者として活動後、パフラヴィー王朝の専制に対抗した。1979年、ルーホッラー・ホメイニを支えイスラム革命を成功させた。大統領を経て、ホメイニ師の死去後の1989年から現在まで長期政権を続けている。イスラム原理主義を掲げ反対派を強硬に抑圧し、イランの核開発も主導している。
核開発を巡る西側制裁でイラン経済は疲弊し、昨年末以降、最安値水準に沈むイラン・リヤルや高インフレへの不満から抗議が拡大した。米国で活動するイラン非営利メディアHRANAは4日までに少なくとも20人が死亡、990人が拘束されたと伝えている。
トランプ大統領「(イランに)出動準備は整った」
就任1期目からイランと対立してきたトランプ大統領の威圧も強まっている。2日にはSNSトゥルース・ソーシャルで「イランが平和的デモ参加者を殺害すれば、米国が救出する。出動準備は整った」と投稿した。翌日にはマドゥロ大統領をニューヨークへ移送している。トランプ大統領は4日にもイラン情勢を「注視している。過去のように市民を殺せば大きな打撃を受ける」と警告した。
ウォール・ストリート・ジャーナルはマドゥロ大統領拘束がハメネイ体制にとって情勢を大きく変え得る出来事になったと評価した。米国が強制的に排除し得るという、これまで想定されなかった可能性を示したためだという。
イラン政府は5日、デモ鎮静化策として約8,600万人の国民に向け、今後4か月間、毎月7ドル(約1,094円)の生活費支給を表明した。ただ、長引く経済難への不満は収まっていないとみられる。
ニューヨーク・タイムズはイラン政府関係者3人の話として「イスラム共和国体制が生存モードに入ったことを高官自身が認めている」と伝えた。イラン・リヤル急落などの経済難や、イスラエル・米国との緊張に対応する手段が乏しいとの認識が広がっているという。
















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