AI投資でサーバー・メモリ購入に資金集中
企業が従来のIT予算を削減
業績見通し引き下げで株価25%急落

引用:IBM
引用:IBM

人工知能(AI)投資の拡大が、企業の情報技術(IT)予算の構造そのものを変え始めている。企業はAI導入に向け、サーバーやメモリなどのインフラ確保に予算を集中させる一方、既存のソフトウェアやITシステムへの投資を後回しにするようになった。その最初の大きな「犠牲者」となったのが米IBMだ。同社は業績見通しを大幅に引き下げ、わずか1日で時価総額約690億ドル(約11兆1,900億円)が消失した。株価は取引時間中に25%急落し、過去最大の下落率を記録している。

米IBMは14日(現地時間)、2026年4~6月期の暫定業績を発表し、売上高172億ドル(約2兆7,900億円)、調整後1株当たり利益(EPS)2.93ドル(約475円)になるとの見通しを示した。市場予想の売上高179億ドル(約2兆9,000億円)、EPS3.01ドル(約490円)をいずれも下回る水準である。インフラ部門の売上高見通しも、従来の「1桁台前半の減少」から7%減へ下方修正した。

米IBMのアービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)は投資家向け書簡で、「6月末、顧客はサーバーやストレージ、メモリを優先的に確保するため、四半期の資本支出を再配分した」と明らかにした。さらに、「供給不足による値上がりを見込んだ顧客が、ソフトウェアよりもハードウェアの購入を先に決めた」と説明している。

特にAIの普及に伴い、DRAMやNAND型フラッシュメモリなどの供給不足が深刻化し、企業の購買行動が急速に変化しているとの分析が出ている。メモリ価格の上昇を受け、企業は一段の値上がり前にサーバーとメモリを確保し、その過程で既存のソフトウェアやコンサルティング契約が後回しになった。

最も大きな影響を受けたのは、IBMの主要顧客である金融機関だ。銀行はAIサービスを運用するため、クラウド事業者から膨大なコンピューティング資源を購入している。そこへメモリ価格の急騰も重なったことで、IT予算全体が圧迫され、既存のソフトウェアに投資する余力が減少したという。

IBMは、AI時代の主力メインフレームと位置付ける「IBM z17」の販売も期待を大きく下回ったと明らかにした。AI時代を見据えた製品であるにもかかわらず、企業が機器そのものよりメモリやサーバーの確保を優先したため、需要は予想以上に大きく落ち込んだ。米IBMのアービンド・クリシュナCEOは「サプライチェーンの影響はある程度予想していたが、顧客が資本支出の優先順位を変更する規模までは見通せなかった」と述べた。そのうえで、「こうした状況では完璧に対応すべきだったが、我々は十分な速さで動けず、複数の大型契約も予定通りに締結できなかった」と認めている。

市場では、今回のIBMの業績ショックは単なる一企業の問題ではなく、AI時代に企業の投資優先順位が変わりつつあることを示すシグナルだとの見方が出ている。市場調査会社イーマーケターのジェイコブ・ボーン・アナリストは米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)に対し、「AI投資の拡大によって資本支出がメモリやハードウェアに集中し、ソフトウェアとサービスの予算を奪っている」と指摘した。さらに、「AI競争で後れを取っているとみなされた既存のIT企業は、市場から大幅に評価を引き下げられる可能性がある」と分析した。

一方、IBMの衝撃がソフトウェア企業全体に波及するとの懸念は、やや和らいでいる。セールスフォース、アドビ、ワークデイ、サービスナウなど主要ソフトウェア企業の株価も取引序盤に5%前後急落したものの、その後は下げ幅を一部縮小した。IBMの不振には、メインフレーム販売の低迷という同社固有の要因も作用したとの見方が広がっている。

荒巻俊
荒巻俊

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