
最近、中国が台湾周辺で人民解放軍軍用機による威嚇飛行を一時中止した。通常実施している行動を中止したため、その背景が疑問視されている。
まず、2月27日午前6時から3月6日午前6時までの1週間、中国は戦闘機や偵察機などを台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入させなかった。台湾国防部の発表による。
戦争研究所(ISW)は「この7日間は、2021年以来台湾周辺で中国空軍機が活動しなかった最も長い期間である」と説明した。
中国はさらに3月6日を除く4日間(3月7日午前6時〜3月11日午前6時)も軍用機を台湾周辺に展開しなかった。
2月27日午前6時から12日間のうち、1日を除く11日間、中国空軍が台湾周辺での威嚇飛行を中止したことになる。
その直前まで、ほぼ毎日中国の戦闘機、偵察機、さらには戦略爆撃機が台湾海峡の中間線または防空識別圏の境界を越えていた。
中国軍用機による中間線越えの行動は、2020年8月にナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問を契機に急増し、次第に日常化した。
台湾の防空力を疲弊させ、心理的圧力をかける心理戦の一環とされる。
中国は11日間中断していた軍用機の威嚇飛行を、3月11日から再開した。
中国が台湾周辺上空への軍用機の侵入を11日間にわたって中止したことは、それ自体異例と言えるものだ。
同期間、中国の艦艇は台湾海峡周辺で活動を続けていたが、「軍用機の越線中止」にも何らかの意図が隠されている可能性がある。
ロイター通信は3月5日、中国軍がすでに今年初めから台湾周辺の威嚇飛行の回数を前年比46.5%減少させていたと報じた。
さらに、これが31日に予定されている米中首脳会談を前にした雰囲気改善のための措置だとの台湾当局者の解釈を付け加えた。
なお、2月27日付でニューヨーク・タイムズはトランプ大統領が台湾への武器販売を延期したと報じた。
昨年12月の行政による110億ドル(約1兆7,520億円)相当の武器販売決定が議会でも承認されたが、大統領の指示で国務省が保留しているという。
台湾問題は2週間後に行われるトランプ大統領と習近平国家主席の北京首脳会談で主要な交渉議題となる見通しだ。
このため、軍用機の威嚇飛行中止は、中国が米国との交渉でより多くのものを得るために示した一種の偽装戦術である可能性が指摘されている。
中国が両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)の開催期間に軍事的摩擦を抑制し、国内の安定に集中するために台湾への威嚇飛行を止めたとの解釈もある。
実際、今年の両会期間(3月4日〜12日)と人民解放軍空軍が越線を一時中止した時期は約6日重なる。
ロイター通信はまた、中国の台湾に対する武力誇示縮小が中国軍内部の相次ぐ粛清の余波だとする専門家の解釈を紹介した。
人民解放軍の最高幹部だった張又侠が解任された後、指揮体制の再編が台湾への対応にも影響を与えたとする見方だ。
中国空軍機の異例の越線中止を米・イスラエルによるイラン攻撃と関連づけて解釈する余地もある。
台湾への威嚇飛行が停止した時点は、米国とイスラエルのイラン攻撃開始の前日だ。単なる偶然とは言い難い。
西太平洋地域の米軍の動態を事前に把握した中国が、威嚇飛行を自制することで米国に自制の姿勢を示す意図があった可能性がある。
米国はすでに1月にインド太平洋地域に配備されていた原子力空母エイブラハム・リンカーンを中東海域に移動させた。
開戦直後の3月初めには、在韓米軍のパトリオットミサイルと終末高高度防衛ミサイル(THAAD)を中東に移送した。
このような状況下で、中国がわざわざ台湾周辺で米国を刺激する軍事的威嚇飛行を慣例的に続ける必要はなかっただろう。
むしろ、姿勢を低く保ち、事態を注視しながら米軍の再配置がアジアにもたらす力の空白を突くことが合理的な判断だったとみられる。
ホルムズ海峡に艦艇を派遣してほしいというトランプ大統領の14日の要請を中国が拒否したのも、予想の範囲内の反応と言えよう。
イランとの戦争で武器と装備の不足に直面する米軍を中国軍が支援する理由はない。
このような状況下で、中国の抑制が求められるインド太平洋軍所属の米軍力の中東地域への派遣は加速している。
米国はイランを攻撃してから2週間が経過した時点で、沖縄に駐留していた第31海兵遠征部隊を戦線に参加させ始めた。
第31海兵遠征部隊には強襲揚陸艦「トリポリ」に搭乗する海軍および約2,200人の海兵隊員が所属している。
米海軍協会のニュースサイト(USNIニュース)は13日、トリポリにF-35Bが19機搭載されていると伝えた。
さらに、第31海兵遠征部隊が現在中東で作戦中のジェラルド・フォードおよびエイブラハム・リンカーン空母打撃群に合流するとみられる。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、海兵遠征部隊が通常5,000人規模で構成されていると伝え、実際の兵力規模はさらに上回る可能性を示した。
西太平洋に配備されていた主力米軍兵力と資産がイラン前線に流出し、この地域の安全保障に不確実性が増している。
在日米軍の中東派遣が報じられた翌日、トランプ大統領は日本、韓国、中国、イギリス、フランスなど5カ国にホルムズ海峡に軍艦を派遣するよう要請した。
ニューヨーク・タイムズは13日、これまで米国がインド太平洋に対する安全保障公約を強調してきたが「もはや信頼性が揺らいでいる」と指摘した。
同紙は特に、核兵器を保有する北朝鮮と国境を接する韓国から米国がTHAADを撤収した事例に注目している。
THAADは米軍の最高のミサイル防衛手段だ。米国は中東を除いたアジア地域の同盟国の中で唯一韓国にTHAADを配備した。
ニューヨーク・タイムズは「インド太平洋地域での今回の武器撤収は、米国の戦争遂行能力が予想以上に脆弱であることを示している」と論評した。
米国のイラン侵攻は、トランプ政権が西半球中心のいわゆる「モンロー・ドクトリン」を公式化した後、初めて発生した大規模な戦争である。THAADの撤収や在日米軍の派遣、軍艦派遣の要請にとどまらない事態も想定され、在韓米軍の撤収を含む、より深刻な展開も視野に入れる必要があるとの指摘もある。
トランプ大統領はイランを望む限り攻撃し、必要な時に戦争を終結させられるかのように声高に主張している。しかし、その戦争が今後どのように展開し、終息するかは見通せない面がある。戦争は始めることよりも終わらせることが難しい。
















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