「利下げを待つ市場に冷水」—FRB議長“高インフレは絶対に許さない”
米下院公聴会を前に声明を発表
「過去5年間のインフレ急騰は過去のものになる」
米労働統計局「6月CPI、前年同月比3.5%上昇」

米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長は14日、「高止まりするインフレは決して容認しない(have no tolerance)」と述べた。昨年始まった世界的な関税措置や今年2月に勃発したイラン戦争、企業によるAI(人工知能)への集中的な投資などが、インフレを再加速させるとの懸念が高まる中での発言だ。市場では、FRBが当面、政策金利の引き下げに慎重な姿勢を維持するシグナルと受け止められている。
ウォーシュ議長は同日、米下院金融サービス委員会の公聴会に出席する前に公表した声明で、「FRBは物価安定を回復させるという揺るぎない決意を共有している」と強調した。また、「高インフレが米国の家計や企業に過度な負担を与えてきたことを十分に認識している」としたうえで、「過去5年間のインフレ急騰は過去のものになる」と語っている。2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以降、米国は前例のない高インフレを経験した。特に2022年6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比9.1%上昇してピークに達し、1981年11月以来、約40年ぶりとなる大幅な伸びに当たる。その後、FRBは物価上昇率を目標の2%まで引き下げるため、利上げを含む金融引き締めを続けてきた。
足元の物価上昇は落ち着きつつあるものの、安心できる状況ではない。米労働統計局が同日発表した6月のCPIは前年同月比3.5%上昇し、市場予想の3.8%を下回った。価格変動の大きいエネルギーと食品を除くコアCPIも前年同月比2.6%上昇となり、5月の2.9%から伸びが鈍化している。一方、ホルムズ海峡周辺を中心とする中東紛争は続いており、国際原油価格の変動は株式市場にも大きな打撃を与えた。インフレ率がいつ再び跳ね上がってもおかしくないとの懸念も根強い。ウォーシュ議長がインフレに警鐘を鳴らした背景には、こうした情勢がある。
前日には、FRBのクリストファー・ウォラー理事もインフレへの警戒感を示した。ウォラー理事は「今週発表されるコアインフレ率が再び強い伸びを示せば、連邦公開市場委員会(FOMC)は近く金融引き締めを検討する必要がある」と述べた。さらに、「インフレが沈静化するまで、ただ眺めているという選択肢はない」と強調している。FRBが何よりも物価安定を重視している姿勢の表れとみられる。

ウォーシュ議長は、米国経済が堅調で、強い回復力を示しているとも強調した。特に、AI需要に対応するデータセンターの建設や、関連機器・ソフトウェアへの膨大な需要が投資をけん引しているとの見方だ。また、「AI投資の拡大が経済にどの程度の恩恵をもたらすかは、まだ分からない。ただ、現在『AI投資』と呼ばれているものが、近い将来、単なる『投資』と呼ばれるようになることはほぼ確実だ」と述べた。FRBは現在、AIがインフレや労働市場に及ぼす影響について、分析を進めている段階だ。
FRB議長は年2回、議会に出席して「半期金融政策報告」を行っている。ウォーシュ議長が就任後、議会の公聴会に出席するのは今回が初めてだった。ウォーシュ議長は、FRBが政策金利の先行きについて必要以上の情報を市場に提供すれば、かえって混乱を招くとの考えを持つ。このため、これまで発言を極力控えてきたウォーシュ議長が、議会でどこまで情報を共有し、自らの立場を説明するのかに注目が集まった。

















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