
マリアム・カーン(21)は「SNSのフィードに動画が繰り返し表示され、それを見るうちに『一度試してみよう』と思うようになった」と話した。
厳しい運動ルーティンをこなす必要も、高価なスキンケア製品を購入する必要もない。カーンのように多くの人が試しているこのトレンドは非常にシンプルで、毎朝白湯を飲む習慣である。
温かい水を飲むことの健康上の利点は、中国の伝統医学やインド発祥のアーユルヴェーダといった全人的医療体系において、すでに数千年にわたり強調されてきた。
古くから続くこの習慣は、今年初めからSNSで人気を集め、世界的に改めて注目されている。
数百万回の再生数を記録したTikTokやInstagramの動画には、「中国人のように(newly Chinese)」や「チャイナマキシング(中国〈China〉とマキシング〈maxxing=特定の行動などを最大化するという意味〉の合成語)」といったハッシュタグが付けられている。
動画の多くは、若者が温かい水を飲み、温かい朝食をとり、ストレッチで一日を始める様子を紹介している。
では、こうしたシンプルな生活習慣は実際健康にどれほどいい影響を与えるのだろうか。
「気」を守る
中国で何百万人もの人々が実践している伝統医学の中核は、「気(き)」の維持にある。気というエネルギーが体内を循環し、その流れが滞ったり乱れたりすると病気が生じるという考え方だ。
なぜ伝統医学への関心が高まっているのか
世界保健機関(WHO)傘下の「グローバル伝統医療センター」で暫定センター長を務めるシャマ・クルヴィラ博士は、若者がオンライン上で中国の伝統的な生活様式に関心を示す現象は、より広範な社会的潮流を反映していると指摘する。
同博士は「ヨーロッパでも研究が進められており、ドイツのある調査では人口の70%以上が何らかの形で伝統的な補完医療を利用していることが分かっている」とし、「中国やインドではその割合が90%を超える可能性もある」と述べた。
こうした伝統医学の支持者の中には、現代医学に不信感を抱く人もいる。これは新型コロナウイルスのパンデミックを経てさらに強まった可能性がある。実際、米国で行われたある調査では、医師や病院に対する信頼度は2020年には70%を超えていたが、2024年には約40%まで低下した。
また、生物医学的治療を受けにくい環境にある人や、費用負担の少なさから伝統医学を代替手段として選ぶ人もいる。
さらに、個別化された全人的アプローチを重視する点に魅力を感じる人もいる。温かい水を飲むといった習慣は、精神・身体・環境のバランスを重視する健康観への第一歩になり得る。
こうした実践は多くの人にとって文化的・精神的・歴史的な意味を持ち、その歴史も深い。
クルヴィラ博士は「多くの伝統医療の実践者や先住民コミュニティは、『私たちはこれを数千年にわたり続けてきた。そして実際に人々に役立ってきた』と語るだろう」と述べた。
WHOのグローバル伝統医療センターは、政策立案者や患者が参考にできるよう、伝統医学に関するエビデンスの評価を行っている。
同博士は「伝統医学のエビデンス基盤は早急に改善される必要がある」とし、現在、世界の保健研究資金のうち伝統医学研究に充てられている割合は1%未満にとどまり、これが大きな障壁となっていると指摘した。
また、患者は伝統医学を試す前に主治医と相談し、全体的な健康管理の観点から安全かどうかを確認すべきだと助言した。
では、温かい水を飲むこと自体にはどのような効果があるのだろうか。これについて明確なWHOの指針はないが、クルヴィラ博士は水の温度や摂取量、個々の健康状態によって影響は異なると説明する。
「結局のところ、重要なのはエビデンスとバランスだ」と述べた。
科学的な見解
英国の長寿医学の専門家で医師のロージー・ブルックス博士は、朝に温かい水を飲む習慣は一定の健康効果をもたらす可能性があると述べ、「消化を助け、便秘の緩和にもつながる可能性がある」と説明した。
さらに、温かい水が食道のけいれんの緩和に寄与する可能性を示す研究も一部あるという。
ただし同博士は、「それ以外については、水が温かくても冷たくても、水分補給そのものが重要だ」と付け加えた。
英国の民間医療機関「ドクター・ヘレン・メディカル」に所属する医師セリナ・グレイ博士は、「冷たい水が健康に悪いという証拠はない」と指摘する。
また、SNS上で広まっている主張とは異なり、温かい水を飲むことが脂肪燃焼や代謝促進、あるいは体の「デトックス」に役立つという科学的根拠はないと強調した。
「温かい水の方が飲みやすく、その結果として水分摂取量が増えるのであれば良いことだが、代謝を高める近道ではない」という。
シンガポールで育ち、日常的に中国伝統医学に触れてきたグレイ博士は、「体を温めるために温かい水を飲みなさいと母に言われた記憶が今でも残っている」と語った。
そして「こうした伝統は自然に受け入れやすく、実践もしやすく、文化的にも意味がある」と付け加えた。
生活のペースを落とすきっかけ
このように、温かい水を飲むことの明確な健康効果を裏付ける科学的証拠は限られているものの、一定の利点があると考えられる伝統的な習慣は他にも存在する。
例えば、全粒穀物を使った温かい朝食は、冷たいシリアルよりも栄養面で優れている可能性がある。また、足の冷えが直接的に病気を引き起こすという証拠はないが、温かく快適な感覚はリラックスや良質な睡眠に寄与する可能性がある。
さらに、小規模ながら信頼性の高い研究では、太極拳や気功が筋力や柔軟性の向上、ストレス軽減に役立つことが示されている。

オ教授は「日常生活の中で、私たちの心は毎日忙しなく動き続けている。まるで心と体が分離しているかのようだ」とし、「瞑想や気功、太極拳の本質は、その心を整え、生活のペースを落とすことにある」と強調した。
ブルックス博士は、温かい水を飲むことに明確な健康効果はないとしながらも、心理的な側面での利点には同意する。「温かい水を飲むことは一種のルーティンであり、忙しい日常の中で自分のための時間を持つきっかけになり得る」という。
一方、カーンは、朝に温かい水を飲むことが自身の精神面に良い影響をもたらしたと語る。
「私は温かい水を飲む時間を、少し立ち止まり自分と向き合い、意識的に一日を始めるための時間だと感じています。」















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