火力発電など総額約6.5兆円規模のプロジェクトを発表
先端半導体・AIサーバー向け素材として注目
中国が世界の供給網を左右

日本と米国は、貿易合意に基づく約85兆円規模の対米投資プロジェクトの第1弾を確定した。日本は、オハイオ州の火力発電所建設、テキサス州の原油輸出施設建設、ジョージア州での人工ダイヤモンド関連施設の拡充など3事業に、計約5.5兆円を投じる。ドナルド・トランプ米大統領は17日(現地時間)、自身のSNSであるTruth Socialに「テキサス州の石油・ガス分野、オハイオ州の発電分野、ジョージア州の重要鉱物分野という戦略的領域で、3つの大規模プロジェクトを発表できることをうれしく思う」と投稿した。
今回の日本の第1弾プロジェクトで特に注目されるのは、「合成(人工)ダイヤモンド」の製造能力の構築だ。投資額は約930億円で、オハイオ州の火力発電所(約5兆円)やテキサス州の原油輸出施設(約3,254億円)に比べれば小規模だが、中国が事実上支配する分野に日本資金を投入し、半導体チップなど先端産業で優位性を確保する狙いがあるとみられている。
ハワード・ラトニック商務長官は同日、ジョージア州のプロジェクトについて「米国内に合成工業用ダイヤモンドの製造能力を構築し、先端産業や技術生産に不可欠な主要材料である合成ダイヤモンド『グリット』の需要を100%国内で賄う」と述べ、「もはやこの重要素材を海外供給に依存することはない」と強調した。
高温・高圧を加えて製造される合成ダイヤモンド・グリットは、ダイヤモンドを微細な粒子状に加工した工業用素材である。半導体製造におけるシリコンウエハーの研磨や、自動車の精密部品の切削など、先端製造プロセスに不可欠と評価されている。
日本と米国は、昨年10月に公表した貿易合意のファクトシートでも、「(合成)ダイヤモンド研磨材の製造施設建設および供給・調達への参加を検討する」との文言を盛り込んでいた。
これまで合成ダイヤモンドは、中国が供給網を主導してきた。ロイター通信によると、米国は2024年時点で中国から合成ダイヤモンドおよび関連機器を約46億円分輸入しているとのことだ。中国は昨年10月、レアアースと一部の合成ダイヤモンドに対する輸出規制計画を発表し、これに先立つ2024年9月には、合成ダイヤモンド製造に使用されるプレス装置を輸出管理対象に指定した。
高市早苗首相も同日、X(旧ツイッター)への投稿で対米投資プロジェクトの中でも合成ダイヤモンド製造に最初に言及した。自動車・航空機・半導体部品の加工に用いられる工業用人工ダイヤモンドの製造事業について説明し、「日米両国はいずれも特定の国への依存度が高い」と指摘した。中国を名指しせず「特定の国」と表現することで、供給依存の高さに懸念を示した形だ。トランプ大統領が同日、「我々の重要な鉱物施設が海外への愚かな依存を終わらせるだろう」と述べたのも同様の文脈といえる。
合成ダイヤモンドは、優れた熱伝導性と電気的安定性を持つことから、先端半導体や人工知能(AI)サーバーなどの高度技術分野の材料としても注目されている。AIサーバーやデータセンターでは演算密度が高まるほど発熱が急増するため、冷却効率がそのままシステム性能を左右する。ダイヤモンド基板を半導体パッケージやパワーモジュールに適用すれば、従来のシリコンやSiC(炭化ケイ素)を上回る熱管理効果が期待される。また、宇宙放射線の影響で従来型半導体が機能低下を起こしやすい人工衛星や宇宙船向け半導体、さらには高精度な制御が求められる量子コンピューター用材料としての研究も進められている。
ラトニック長官は声明で、残る2つの事業についても具体的に説明した。それによると、オハイオ州の火力発電所は出力9.2GWに達する史上最大規模の天然ガス発電所で、人工知能(AI)向けデータセンターなどに電力を供給する計画だ。テキサス州のプロジェクトでは、メキシコ湾に深海原油の輸出施設を建設し、年間約3〜5兆円規模の米国産原油輸出を創出することを目標としている。
政府の投資プロジェクトが始動したことで、韓国に対する対米投資圧力も強まる見通しだ。対米投資に関する覚書(MOU)や日本の前例を踏まえると、エネルギー・資源・インフラ分野への投資が優先的に検討される可能性が高い。キム・ジョングァン産業通商部長官は9日、「(最初のプロジェクトが)エネルギーや原発に限定されたものではなく、複数の案を並行して協議している」と述べた。
















コメント0