
米国・イスラエルとイラン間の戦争の影響でホルムズ海峡が封鎖され、世界は液化天然ガス(LNG)の供給断絶の危機に直面している。戦争前に中東を出港した最後の船舶が到着する約10日後には、世界のLNG供給の流れが実質的に途絶する可能性があるとの見方も出ている。
フィナンシャル・タイムズ(FT)は21日(現地時間)、独立系の船舶仲介会社アフィニティの追跡分析を引用し「アジア向けのLNG貨物は残り1件のみで、欧州向けも6件程しか到着が予定されていない」と報じた。そのうえで「輸入国は今後、本格的な供給不足の影響を実感することになる」と指摘した。
危機の背景にあるのはカタールだ。世界のLNGの約20%を生産する主要供給国だが、戦闘初期にイランがホルムズ海峡を封鎖したことで輸出が滞った。さらに、生産施設を直接標的とした攻撃が加わり、供給障害は長期的かつ構造的な問題へと発展している。イスラエルがイランとカタールが共有する世界最大級のガス田、サウス・パルスを初めて直接攻撃したことを受け、イランが報復としてカタールの世界最大のLNG輸出拠点ラスラファン施設にミサイル攻撃を行い、深刻な連鎖的被害が発生したためだ。
フォーブスは同日「今月だけで世界の予想供給量の約14%に当たる約580万トンのLNG供給が失われた」とし、単なる輸送の遅れを超え、最大5年を要する長期的な生産障害に発展する可能性があると分析した。
代替供給の確保を巡る各国の競争が激化する中、価格は制御不能な水準に達しつつある。アジアのLNGスポット価格は戦争後に約2倍に急騰し、MMBtu当たり20ドル(約3,000円)から23ドル(約4,000円)前後となった。欧州の指標であるオランダ天然ガス先物価格も倍増した。特にラスラファン施設への攻撃直後には、わずか数時間で欧州とイギリスのガス価格がそれぞれ24%、23%急騰するなど、市場の変動性は極めて高まっている。
こうした中、LNGの確保競争はすでに「地域間の争奪戦」の様相を呈している。CNNは19日、エネルギー分析会社ケプラーのデータを引用し「当初は欧州向けだったLNG運搬船11隻がアジアへ航路を変更した」と報じた。アジア各国の確保競争が欧州のガス価格上昇を招き、世界的な貨物争奪を激化させているという。
カタール産LNGへの依存度が高いアジア各国も対応に動いている。FTは、日本が今年1月に一部再稼働した新潟県の原発などへの依存を高める見通しだと伝えた。エネルギー調査会社ウッドマッケンジーなどは、韓国もガス不足に対応するため石炭火力や原子力発電の比率を大幅に引き上げると予測している。
台湾の状況はさらに厳しい。台湾経済部は来月末までに必要なLNG輸送22隻分の確保に向け、湾岸地域から緊急調達したと明らかにしたが、安心はできないとの見方が出ている。FTは、シンクタンク・アトランティック・カウンシルの分析として、脱原発と石炭削減を進めてきた台湾は、電力需要が急増する夏まで海峡封鎖が長引けば深刻なエネルギー不足に直面する可能性があると警告した。
中国も一定の影響を受ける見通しだ。FTによると、中国はLNG輸入の約30%を中東に依存している。ただし、市場では中国がスポット市場で一定量を調達しつつも、価格負担から積極的な購入には慎重な姿勢を取るとみられている。中国は国内生産や石炭火力への切り替えによって影響を吸収するとの見方もある。
今回の事態は短期間で収束しない可能性が高い。カタールのエネルギー相は、ラスラファン施設の被害によりLNG生産能力の約17%(年間約1,300万トン)が今後3〜5年にわたり停止すると明らかにした。一部の長期契約については不可抗力宣言の可能性にも言及している。
さらに代替供給の確保も容易ではない。フォーブスによると、アメリカやオーストラリアはすでに生産能力をほぼ最大限まで稼働させており、ナイジェリアやアルジェリア、トリニダード・トバゴなどが増産しても、今月失われた約580万トンの供給のうち200万トンを補うのも難しいとされる。LNGは石油と異なり戦略的備蓄システムが存在しないことも、危機を一層深刻化させている。
地政学リスク分析を手がけるユーラシア・グループのグレッグ・ブルー氏は、エネルギー専門メディアのヒートマップとのインタビューで「今年見込まれていた世界のLNG供給過剰は完全に消えた」と指摘し、逼迫した市場環境が長期化するとの見方を示した。
















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