
中国が、イランの敗北を防ぐための仲介外交に乗り出した。専門家の間では、米国とイスラエルの攻勢が続く中、中国がイラン支援へと軸足を移しつつあるとの見方が強まってきた。2日には、王毅外相がバーレーン、サウジアラビア、ドイツ、EUの外交トップと相次いで電話会談し、米国とイランの双方を念頭に敵対行為の早期停止を促した。
中国は仲介外交の舞台を中東だけにとどめず、欧州にも広げた。王毅外相は2日、EUのカヤ・カラス外交安全保障上級代表との電話会談後、国連安全保障理事会の役割は、承認されていない軍事行動に正当性を与えることではなく、緊張緩和に焦点を当てることにあると強調した。
さらに、ドイツのヨハン・ヴァーデフール外相に対しては、米国とイスラエルによるイラン攻撃は明白な国際法違反だと述べた上で、ドイツは客観的かつ公正な立場を保つべきだと求めた。王毅外相はこれに先立つ先月31日、パキスタン外相との会談で、即時の敵対行為停止を柱とする「中東和平5大イニシアチブ」を打ち出しており、足元では支持拡大も進めている。
米国、イスラエル、イランの戦争が6週目に入る中、中国は前面に出過ぎることは避けながらも、イランの敗北だけは容認しない姿勢を固めつつあるとみる向きが多い。開戦当初は関与に慎重だったが、イランが米国とイスラエルに敗れ、親米政権が発足する事態は阻止しなければならないとの判断に傾いたという。これは、ウクライナでロシアが敗北しないよう暗黙のうちに支える構図とも重なる。中国がイラン支援へ動いた背景には、大きく5つの事情がある。
第一に、米国によるホルムズ海峡掌握を防ぐ狙いだ。イランに親米政権が誕生すれば、米国が中国の主要なエネルギー輸入ルートを遮断する可能性があるためだ。
第二に、米国のドル覇権を揺さぶる思惑がある。中国はイランとの石油取引の少なくとも8割を人民元で決済し、いわゆるペトロ人民元の定着を試してきた。今回の戦争は、その流れが本格化する転換点になり得るとの見方が強い。先月24日には、ドイツ銀行がイラン戦争によるドル覇権の亀裂を扱った報告書に「イランがドルに与えた影響:ペトロダラーのパーフェクトストーム(超大型危機)」という表題を付けた。
第三に、一帯一路の維持がある。イランは、中国の習近平国家主席が進める一帯一路構想の重要拠点であり、パキスタンのグワダル港から約100キロの位置にある要衝でもある。仮にイランが崩壊すれば、中国にとってはグワダル港の防衛が難しくなり、一帯一路の西側ルートも大きく揺らぐ。
第四に、中国西部国境の緩衝地帯を確保する必要がある。中国が少数民族居住地域の新疆やチベットへの武装勢力流入を防ぐには、隣接するアフガニスタン、パキスタン、イランとの協力が欠かせない。中国主導の上海協力機構(SCO)に昨年イランの加盟を後押ししたのも、こうした緩衝地帯の確保が大きな理由だったとされる。
第五に、イランに投じてきた既存の国益を守らなければならない。2021年3月、王毅外相はテヘランを訪れ、今後25年間で4,000億ドル(約64兆円)を投資する一方、その見返りとしてイラン産原油を安価に調達する「25年協定」を結んだ。イランが米国に敗れれば、中国の巨額投資は水泡に帰す恐れがある。
一方、イランにとっても中国の後ろ盾は欠かせない。ホルムズ海峡を封鎖して戦況の立て直しを図るイランは、「敵の敵は味方」という統一戦線の発想で外交を組み立てている。米国が求める「無条件降伏」を拒みながら戦争終結へ持ち込まなければならないだけに、中国の関与を求めざるを得ない状況だ。
加えて、米国の意図に反してイラン戦争が長期化したことで、中国は戦略面での優位も手にしつつある。米世論調査会社ギャラップは3日、昨年130か国余りで実施した調査の結果、中国指導部への支持率が36%となり、米国の31%を上回ったと発表した。この調査にはイラン戦争の影響がまだ反映されておらず、差がさらに広がる余地もある。中国は経済面でもイランとの関係をてこに、エネルギー供給網の維持を狙っている。
約5週間後に迫った北京での米中首脳会談を前に、中国が新たな交渉カードを得たとの分析も出た。台湾・聯合報のグオ・チョンルン副編集委員は4日、イラン紛争の終結を後押しすることは中国の核心的利益に合致するとした上で、中国の国際的影響力を高めるだけでなく、5月に予定される米国のドナルド・トランプ大統領の訪中をにらんだ対米交渉の材料にもなり得ると指摘した。
同時に、イラン戦争は米国と向き合う中国のパラドックスも浮き彫りにした。米外交問題評議会(CFR)のゾンユアン・ゾーイ・リウ氏は最近、フォーリン・アフェアーズへの寄稿で、単に弱体化した米国であれば管理できるが、予測不能で暴力的な米国ははるかに危険だと論じた。さらに、中国の習近平国家主席は、信頼できず、自信を失い、力も弱まった米国という本来望んでいた姿と、より不安定化した国際秩序という最も恐れていた現実の双方を同時に抱え込むという大きな逆説に直面したとも分析し、中国側の緊張感をにじませた。
















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