
中国が台湾に対して武力行使に踏み切る場合、最初の手段は上陸作戦ではなく、大規模なサイバー攻撃となる可能性が高いとの分析を、台湾の国防シンクタンクが示した。
台湾国防部傘下の国防安全研究院(INDSR)は10日、8日に欧州14カ国の議会スタッフ訪問団と、中国による台湾への脅威や防衛態勢、認知戦、サイバー安全保障戦略について協議したと明らかにした。研究院はこの場で、中国が台湾への武力行使を開始した場合、初期段階で大規模なサイバー攻撃を実施し、重要インフラをまひさせる可能性が高いと分析した。本格的に軍事力を投入する前に、政府機能や生活基盤を先に揺さぶる可能性があることを意味する。
中国軍は、ウクライナ戦争以降、サイバー戦の要員やセキュリティー専門家の育成を進めるとともに、人工知能(AI)を活用した偽情報工作も強化していると評価された。例えば、AIを使って指導者が演説する偽の映像を作成・拡散し、映像の真偽が確認されるまでに生じる情報の空白を、作戦の好機として利用する可能性があるという。研究院は、SNSを通じた情報操作は、単に虚偽情報を拡散するだけでなく、社会の不安や不信を増幅させる形で機能していると指摘した。
台湾政府のネットワークは、これまでにも繰り返し大規模なサイバー攻撃にさらされてきた。台湾の国家安全局は4月に議会へ提出した報告書で、今年第1四半期に政府のサービスネットワークで約1億7,328万件のサイバー侵害活動が確認されたと明らかにした。同期間に当局が確認した不審なアカウントは約1万3,000件、論争を招く情報は約86万件に上った。国家安全局は、中国に情報収集や監視、情報窃取能力を拡大する狙いがある可能性があると分析した。
一方、研究院は、中国が戦争に踏み切り、台湾の半導体ウエハー製造施設などを掌握したとしても、オランダや日本、米国を含む世界の半導体エコシステムとのつながりを失うとの見方を示した。先端半導体は、工場一つを確保するだけで生産できるものではないためだ。装置や素材、設計、技術支援は複数の国にまたがって成り立っており、工場を占拠することと、生産網をコントロールすることは全く別の問題だと分析した。
台湾はウクライナと異なり、北大西洋条約機構(NATO)のような集団安全保障体制による支援を期待しにくく、島であるという地理的条件から、戦争が始まれば外部からの補給も容易ではない。一方で、台湾海峡が天然の障壁となるほか、現時点で把握されている中国軍の上陸用装備や兵力では、全面侵攻を行うには不十分だと研究院は評価した。台湾当局は、避難施設の点検や有事のエネルギー輸送ルートの確保を進めるとともに、サイバー人材の拡充や重要インフラ防衛を中心に対応能力を高めている。研究院は、今後、台湾海峡の安全を左右する要因として、国際社会の支援、台湾自身の備え、中国軍の自信や意図、能力を挙げた。また、中国の脅威は台湾だけでなく周辺地域全体に及ぶとして、各国との非公式な協力も一層重要になるとの見方を示した。















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