開催前から懸念されていたトライアスロンの競技会場となるセーヌ川の水質汚染だが、競技を強行した結果、出場選手たちからは様々な批判の声があがっている。

さらに、実際に選手の健康に問題が発生するなど、騒動の鎮静化は難しくなっている。

31日(現地時間)、前日開催予定だったトライアスロン男子がセーヌ川の水質検査の結果、基準値を超えたことで延期され、トライアスロン種目は男女同時開催となった。

トライアスロンはスイム1.5km、バイク40km、ラン10kmで着順を争う競技で、3種目の中で今回、スイムがセーヌ川で行われた。

開催都市パリの下水道システムはそもそも、汚水と雨水が同じ管に入る「合流式」で知られている。その管に大量の雨水が入り込み、一定の量を超えると汚水がセーヌ川に流れ込んでしまう。そのため、通常でも大腸菌数値が高く汚染が問題視されているうえ、大雨が続くとさらに悪化させてしまう。セーヌ川は開会式から翌日までの降雨で汚水が川に流れ込み、スイム練習は2日間にわたりキャンセルされた。

トライアスロンを統括する「World Triathlon(ワールドトライアスロン)」の水質基準では、河川の場合には、100ml中の大腸菌数は1,000個以下が大会実施の判断基準となっている。当然、水質の汚染は胃腸炎をはじめとする様々な疾患の原因となりえる。

セーヌ川は数世紀にわたりゴミ捨て場として利用されてきたため、長きにわたり水質改善が課題となっていた。オリンピックに向けて、8年余りの間、15億ドル(約2,130億円)をセーヌ川の浄化事業に投じてきた。また、セーヌ川で泳ぐことはパリ市民の夢でもある。

出場選手の批判相次ぐ…健康問題による今後の種目の棄権や選手の入れ替えなど実害も

結果的に競技は開催されたが、様々な波紋を呼んでいる。

トライアスロン男子のカナダ代表タイラー・ミスラウチュク選手は10回も嘔吐した。

過酷な競技であるため、選手が極度の疲労感を感じて嘔吐するのは珍しいことではないが、10回は異常だ。

トライアスロン女子のスペイン代表で医師でもあるミリアム・カシージャス選手は「大会主催者が選手の健康に対する配慮よりもセーヌ川という見栄えを優先した結果だ」と述べた。

そして、「出場選手の健康を真剣に考えたのなら、セーヌ川ではなく(パリ以外の地域で開催するなどの)プランBがあったはずだ」と指摘し、「大会準備期間は8年もあったのに、選手たちをサーカスのピエロのようにした。これまでもトライアスロンではレース中やレース後に体調が悪化し、数ヶ月間抗生物質を投与しなければならなかった選手もいる。それは、アスリートとしてのキャリアを台無しにする」と批判した。

29位に終わったアメリカ代表のセス・ライダー選手は「トイレに行っても手を洗わないようにするなど、大腸菌に慣れようとしている」とセーヌ川の水質を間接的に批判した。

実際に試合から数日が経ち、水質問題の余波は拡大している。

「CNN」によると、31日の競技に参加した選手の内、トライアスロン女子のベルギー代表で5日の混合リレーへの出場を予定していたクレア・ミシェル選手が競技の数日後に体調を崩し、彼女の体調不良を受けてベルギーチームは棄権を発表したという。

また、スイス代表でも感染性胃腸炎を発症した選手が発生し、選手の入れ替えが行われた。

平野大地
平野大地

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