
日本の造船業界が「需要過多と供給不足」という構造的なジレンマに陥っている。政府が造船業の復権を掲げて各種支援策を打ち出す中、人手不足によって受注機会を喪失し、国内の受注量は4年連続で減少した。日本経済新聞は14日、この「好況下の減速」の実態を報じた。
日本船舶輸出組合(JSEA)がまとめた2025年度の輸出船契約実績は、前年比15%減の904万総トンにとどまった。受注が落ち込んでいるのではなく、国内各社の建造スロットが2029年まで完全に埋まっており、これ以上の受注を受け入れられない「飽和状態」にあることが主因だ。国内の手持ち工事量は約3.5年分に相当する2,935万総トンに達しており、今治造船の檜垣幸人社長も「国内荷主の代替需要にすら応えきれていない」と、供給力の限界を認めている。
世界の造船市場は、2010年代の大量建造船が代替サイクルを迎えることに加え、次世代燃料への転換(GX)を背景に、2035年には現在の約1.3倍となる9,000万総トンまで拡大する見通しだ。しかし、2024年時点の建造シェアでは中国が5割強、韓国が約3割を占める一方、日本は1割強に低迷している。政府はこの劣勢を挽回すべく、2035年の建造能力を1,800万総トンへ倍増させる「造船業再生ロードマップ」を策定。3,500億円規模の基金を投じ、自動化設備やAI技術の導入を強力に支援する方針を打ち出した。
現場では人手確保に向けたなりふり構わぬ努力が続く。JMUが新卒採用を大幅に増やし、常石造船が初任給を改定するなど待遇改善を急ぐ一方で、今治造船やJMUはAI連携ロボットによる溶接工程の自動化など、人の手に頼らない生産体制の構築に活路を見出している。
さらに、2026年現在の緊迫した中東情勢は、造船業界に複雑な影響を及ぼしている。エネルギー価格の上昇による海上荷動きの停滞というリスクがある反面、ホルムズ海峡の封鎖等による迂回航路の定着は、輸送効率の低下を補うための「船腹不足」を引き起こし、さらなる新造船需要を誘発する可能性も指摘されている。日本の造船業がこの波を捉え、かつての覇権を取り戻せるかは、現在進めているデジタル化と省人化がどこまで建造能力の底上げに寄与するかにかかっている。















コメント0