
「ディテールの悪魔」
最近、中国車に接した業界関係者がよく口にする表現だ。中国の完成車メーカーが、消費者の目線からすると、やや過剰とも感じられるほどの細かい仕様を競って搭載しているからだ。必要かと首をかしげたくなるオプションも、実際に使ってみると意外な実用性を備えている場合が少なくない。それだけに、中国車の商品企画は既存の自動車業界の常識を超えた領域にまで広がっている。
代表例がジーカー(ZEEKR)の7Xだ。同車には「ウィンドブレーキングシステム」が採用されている。浸水や落下などの緊急時に乗員の脱出を助ける装置で、運転席ドアパネルの内側に隠されたレバーを引くと窓が割れる仕組みだ。緊急時の生存可能性を高めるための安全装備として注目を集めている。
7Xには冷温庫オプションも用意されている。5.3Lの容量で缶飲料6〜7本を収納でき、-15℃から50℃まで温度調整が可能だ。
ジーカー009は、より明確にプレミアム層を意識した内容となっている。室内には花瓶が配置される。単なる花ホルダーではなく、高級ホテルのラウンジのような雰囲気を演出するための設えだ。ディフューザーシステムも加わり、視覚と嗅覚を同時に刺激する。2列目センターコンソールには電子式金庫も設置されている。
BYDはさらに一歩踏み込んでいる。同社のプレミアムブランド・仰望(ヤンワン)のU8には「緊急フロートモード」が搭載される。車両が深い水域に入ったと判断すると機能が作動し、一定時間水面に浮遊できるよう設計されている。浮遊状態でも車輪駆動で方向転換や低速移動が可能な設計とされている。
仰望のEVスーパーカーU9は、能動型サスペンションシステム「DiSus-X」を前面に打ち出している。このシステムは車体を個別に制御し、音楽に合わせて車両が動くパフォーマンスを実現できる。瞬時に車体を持ち上げたり、障害物を飛び越えるような動作も可能だ。実用性よりも技術力を視覚的にアピールする性格の強い機能といえる。
中国の電気自動車メーカー・セレス(Seres)は最近、車両用トイレに関する特許も取得した。特許には換気・排気システムや回転式加熱装置などが含まれており、長距離移動や特殊な環境での活用を想定したコンセプトとして解釈されている。
こうした細部仕様は、日系や欧米系の完成車では容易には見当たらない。技術力の問題というより、安全規制や認証手続き、各国の法規の違いが要因だという見方が強い。中国市場は比較的新しい機能や実験的な仕様を迅速に実用化できる環境を整えているからだ。
もちろん、すべての機能が実際の消費者に必要なわけではない。完成度や実効性も検証が必要だ。ただ、新しいアイデアを商品化し、いち早く市場へ投入するスピードに関しては、中国企業が確かな強みを持っているとの評価が高まっている。













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