
道路上での野生動物との衝突、いわゆるロードキルは、もはや特定の国だけの問題ではない。全世界で毎年4億匹以上の野生動物が車両との衝突で命を落とすと推定され、米国だけでも年間約3億4,000万羽の鳥が道路上で死んでいるとの調査結果もある。
日本や米国でも近年、シカやアライグマ、イノシシなどとの衝突事故が増えており、各国が対策を進めている。そうしたなか、2025年末に韓国のオンラインコミュニティで話題になったロードキルの写真が、改めて注目を集めている。バンパーにシカの死体を挟んだまま気づかずに走行する乗用車が写っており、波紋を広げた。
駐車場で見つかった痕跡が事件の発端に
事件が明らかになったのは2025年12月、韓国のオンラインコミュニティに一枚の写真が投稿されたことがきっかけだった。マンションの地下駐車場に停められた白い乗用車のバンパーに、「キバノロ」と呼ばれる韓国に多く生息するシカの死体が挟まっていたのだ。

キバノロはノロジカより小さく、犬歯の代わりに上顎から長い牙が伸びる独特の外見から、海外では「バンパイアシカ」とも呼ばれている。写真の個体は大きさから、成体ではなく幼体とみられる。投稿者によると、運転者はキバノロをはねた後、死体がバンパーに挟まっていることに気づかないまま走行を続けていたが、通報を受けて出動した救助隊によって事態は収束したという。
本当に気づかなかったのか ネットの見方は分かれた
写真が公開されると、オンライン上ではすぐに議論が巻き起こった。多くの利用者は「衝撃があったはずなのに、気づかないはずがない」、「音も大きかったはずで、確認しなかったのが理解できない」、「もし人だったらと思うとぞっとする」などと反応し、運転者の不注意を指摘した。

一方で、「この程度の大きさの幼いキバノロがグリルに挟まった場合、路面の段差を越えた程度の振動としか感じられないこともある」、「バンパーのグリルは衝撃を吸収するように設計されており、気づかなかった可能性もある」と、別の見方を示す声もあった。実際、韓国ではキバノロの生息数が約70万頭に上るとされ、夜間の走行中に遭遇するケースは珍しくない。
再燃したロードキル問題に各国が対応を進める
今回の事件が改めて注目された背景には、ロードキルが世界的に深刻化する野生動物管理の課題となっていることがある。国土交通省の資料によると、2022年度時点で直轄国道だけで約7万件、高速道路では約5万1,000件のロードキルが発生しており、生息地の分断が主な原因として指摘されているという。

日本では2025年から、国土交通省が北海道・鹿児島・沖縄の3地域で路面表示などを活用したロードキル対策の実証事業を進めている。日産自動車も、動物が認識できる特殊な音を発して衝突を防ぐ「日産アニマラート」プロジェクトに取り組む。米国でも毎年100万件以上のシカとの衝突事故が報告されており、関連インフラへの投資や警告標識の拡大が継続的に議論されている。
バンパーにキバノロの死体を挟んだまま走行した今回の事件は、運転者の不注意の有無にかかわらず、世界各地の道路で繰り返される野生動物との衝突問題を改めて浮き彫りにした。車両との接触で動物が傷つき、あるいは死んだ場合は、直ちに関係機関へ通報するのが原則だ。ロードキルは動物の命だけでなく運転者の安全にも直結するだけに、事故が起きた際は必ず停車し、状況を確認する習慣が求められる。













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