
米国、英国、オーストラリアの3カ国が、海底ケーブルやパイプラインを狙った攻撃の可能性に備え、無人潜水機(UUV)の共同開発に乗り出す。世界のインターネット通信や国際決済、クラウドサービス、金融取引を支える海底インフラが、ロシア、中国、イランを巡る地政学的リスクの高まりを背景に、新たな安全保障上の戦場として浮上している。
米CNNは5月31日(現地時間)、米英豪3カ国が安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じて無人潜水機を共同開発することで合意したと報じた。この合意はシンガポールで開かれた3カ国国防相会談で発表され、装備の引き渡しは来年から始まる予定だ。
AUKUSは、この事業が3カ国の偵察・攻撃能力を高め、対潜水艦戦、対水上戦、機雷対応能力を強化すると明らかにした。海底ドローンに先進的なセンサーと武器システムを組み合わせ、海底ケーブルとパイプラインを狙った脅威に対応する構想だ。
リチャード・マールズ豪国防相はシンガポールで「海底は戦場だ」と述べた。彼はいわゆる「影の船団(シャドーフリート)」に対して、より強力な対応が必要だとの認識も示した。
西側諸国の政府は、ロシアや中国による海底ケーブルへの攻撃や破壊のリスクが高まっているとみている。また、ペルシャ湾の浅海域を通る多数のデータ通信網についても、イランが圧力手段として利用する可能性を懸念している。
ピート・ヘグセス米国防長官は、今回の無人潜水機が海底作戦を支援し、海洋領域における3カ国の共同優位性維持に寄与すると説明した。ジョン・ヒーリー英国防相も、新たなAUKUS事業が海底ケーブルやパイプラインを狙った脅威への対処能力を高めるとの見方を示した。

海底ケーブルは現代の通信インフラの中核を担っている。世界には約570本の海底ケーブルが敷設されており、さらに80本の建設計画が進行中だ。これらのケーブルは大陸間通信データの95~99%を運んでいる。国際決済や秒単位で行われる国境を越えた金融取引、企業間のデータ移転の大半も海底通信網に依存している。
エネルギーインフラも海底へと拡大している。送電用の海底電力ケーブルの増加に伴い、通信ネットワークだけでなく、再生可能エネルギーの供給網も海底インフラへの依存度を高めている。
ロシアの動きは西側諸国の警戒感を強めている。英国は先月、ロシア潜水艦3隻が北大西洋の海底ケーブルを秘密裏に偵察していたとして追跡したと明らかにした。ヒーリー国防相はロシアのプーチン大統領に対し、ケーブルやパイプラインの破壊行為は容認されないと警告した。
英国議会も昨年、有事の際には英国の重要インフラが攻撃対象となる可能性があると指摘し、そのような攻撃を防止、あるいは適切な時間内に復旧できるか確信が持てないと警鐘を鳴らしている。
ロシアによるウクライナへの全面侵攻以降、バルト海ではガスパイプラインやインターネットケーブルが損傷する事案が相次いで発生した。欧州の情報機関は、ロシアの「影の船団」が破壊工作や偵察活動に利用される可能性にも警戒を強めている。

人工知能(AI)データセンターの急増も、海底ケーブルの重要性を一段と高めている。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)では大規模AIデータセンターの建設計画が進められており、これらの施設が海外顧客にサービスを提供するためには、膨大なデータを伝送する海底光ファイバー網が不可欠となる。
ホルムズ海峡も新たなリスク要因として浮上している。同海峡の海底には、電子商取引、クラウドサービス、金融、通信に利用される世界のインターネット通信を支える主要な海底ケーブルが数多く通過している。
イランの国営・半国営メディアは最近、このルートの脆弱性を強調している。半国営タスニム通信はホルムズ海峡を通過する海底ケーブルの地図を公開し、その脆弱性を指摘したほか、ハバルオンラインは同海峡を通るすべての光ファイバーケーブルに対し、監視許可と主権通行料を課すべきだと主張した。
紅海も重要な変数となっている。欧州、アジア、アフリカを結ぶデータトラフィックのかなりの部分が紅海の海底ケーブルを通じて移動する。CNNは、ホルムズ海峡や紅海で船舶の航行や海底ケーブルの運用に支障が生じた場合、経済的影響が迅速かつ広範囲に広がる可能性があると伝えた。













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