「水も電気も止めるつもりか」—イラン、湾岸諸国の“発電所・海水淡水化施設”まで攻撃
米国、米兵2人死亡を受け5時間超の報復攻撃
イラン、ヨルダンの交通・物流拠点を攻撃
周辺国の海水淡水化施設なども標的に

休戦破棄後、米国とイランの戦闘は一段と激化し、周辺のアラブ諸国まで巻き込まれている。戦火が制御不能な水準にまで拡大する兆しも見え始めた。イスラエル国防軍は7月19日、「イランがヨルダン南部の都市アカバを狙ってミサイルを発射した。一部の破片がイスラエル方面へ飛来する可能性に備えている」と発表した。
紅海に面するアカバは、ヨルダン唯一の港だ。イスラエル南部、エジプトのシナイ半島、サウジアラビア西部が接する地域に位置する地政学的要衝で、港湾や空港などの交通・物流施設が集中している。これに先立ち、在ヨルダン米国大使館が同日、「ヨルダン当局がアカバ空港と港湾に退避命令を出したため、米国人は絶対に近づかないように」と注意喚起した直後、イランによる攻撃の情報が伝えられた。
7月17日には、イランが発射したミサイルが、ヨルダンの首都アンマンから東へ100キロ離れたムワファク・サルティ王立空軍基地を直撃し、駐留していた米兵2人が死亡、1人が行方不明となった。これを受け、米国は翌18日、ミサイルや無人機を投入し、イラン全土の軍事・エネルギー施設を5時間30分にわたって攻撃して報復に踏み切った。するとイランは、今度はイスラエルと隣接するヨルダンの交通・物流拠点を標的にしたとみられる。
イラン、ミサイル・無人機を十分確保 中国・ロシア支援の可能性も
6月17日、両国は終戦に関する覚書(MOU)を交わし、60日間の休戦に入った。しかし、休戦はわずか3週間で反故にされ、衝突は最高潮に達している。近隣国まで戦場へ引きずり込まれる様相を呈している。
イランがヨルダン国内の米空軍基地を狙ってミサイルや無人機を発射し、米兵2人が死亡、1人が行方不明になったとの情報を受け、中東メディアは、戦争開始後、イランの直接攻撃で米兵が死亡したのは初めてだと伝えた。ミサイルが上空からほぼ垂直に降下し、着弾後に炎と煙が立ち上る映像も公開されている。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)は、イランが機動再突入体(MARV)を搭載したミサイルを使用し、迎撃網を回避した可能性まで指摘した。
米国は報復攻撃で、イランの軍事施設だけでなく、エネルギー施設も集中的に攻撃した。イランメディアによると、同国南部のエネルギー・物流の重要拠点であるケシュム島が少なくとも6発のミサイル攻撃を受けたという。港湾都市シリクとバンダルアッバース、内陸都市ハジアバードなどでも爆発が確認されている。
イランも報復として、クウェートにある米軍基地2か所を自爆型無人機で攻撃した。米国は最近、イラン全土の軍事施設に加え、エネルギー施設、鉄道、橋、空港などの民間インフラにも広範囲な攻撃を続けている。これに対抗し、イランもサウジアラビア、クウェート、バーレーン、ヨルダン、カタールなどにある米軍施設をはじめ、発電所や海水淡水化施設にまで報復攻撃を加えた。湾岸諸国の住民生活に直結するインフラまで標的にしたことで、イランは「レッドライン」を越えたとの見方が広がっている。
攻撃の水準が高まるにつれ、双方が発するメッセージも激しさを増している。潜伏中のイランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師は7月18日の声明で、米国を「大悪魔」と呼び、「終戦MOUに記された米国のドナルド・トランプ大統領の署名は、もはや価値も効力もない」と述べた。続けて「犯罪と約束破りを巡る暗い経験は、米国の不誠実さと卑劣さを示している」と米国を厳しく非難した。
イランのカゼム・ガリババディ外務次官も、「米国との終戦MOUに基づく義務の履行を中断する」と表明し、休戦破棄を既成事実化した。イランは米軍の空爆への報復を名目に、クウェート、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)など湾岸諸国の米軍施設だけでなく、発電所や海水淡水化施設まで攻撃対象に加えている。このため、湾岸諸国との関係が破綻に向かっているとの分析も出ている。
イランとの全面戦争の可能性が高まるなか、米国は欧州などに配備している戦闘機や空中給油機といった追加戦力を中東に集結させ、地上軍の投入まで検討している。米国とイランが報復と再報復を重ねるにつれ、湾岸諸国の被害は収拾がつかない規模へ膨らみつつある。
クウェート政府は7月19日、イランが2日連続で同国の発電・海水淡水化施設を攻撃し、一部設備の稼働が停止したと発表した。バーレーン政府も数回にわたって空襲警報を発令し、住民に無人機やミサイルによる攻撃から避難するよう呼びかけている。サウジアラビア、ヨルダン、カタールでも、イランのミサイルに対する迎撃が続いた。
湾岸6か国で構成する湾岸協力会議(GCC)は、イランの攻撃を非難する声明を発表した。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、「イランと域内で続く民間インフラへの攻撃」を中止しなければならないと訴えている。
米国とイランの衝突に周辺国まで巻き込まれるなか、戦争は休戦や終戦から遠ざかり、事実上の「中東全域戦争」に発展するのではないかとの観測も出ている。米ニュースサイト「アクシオス」は、「米軍がイスラエル国内の空軍基地に、空中給油機を増強する計画を通知した」と報じた。長距離空爆作戦の中核資産である空中給油機を、2月の開戦時と同程度まで投入する計画だという。実際、米中央軍(CENTCOM)は7月17日、SNSでF-35Aステルス戦闘機が中東上空においてKC-135ストラトタンカーから空中給油を受ける映像を公開した。
WSJも、米国が欧州駐留の米軍戦闘機を中東に配備していると伝えた。そのうえで、「トランプ大統領は最近、ホワイトハウスの危機管理室(シチュエーションルーム)で、イランの地下核施設を爆撃し、地上軍を投入してホルムズ海峡付近の島々を占領する案まで協議した」と報じている。トランプ大統領は7月16日の国民向け演説で「イランに対して大きく勝利している」と述べ、対イラン戦争では対話より武力行使を重視する姿勢を鮮明にした。
ただ、トランプ大統領が公言する「勝利」の実現は容易ではないとの分析も少なくない。イランは最近、ミサイルと無人機の在庫を十分に確保し、米軍の防空網を回避する能力も高めており、中国とロシアが背後で支援している可能性も取り沙汰されている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、イランが7月17日からヨルダンの米軍基地を4回以上にわたり激しく攻撃し、最終的に米兵の死者が出た状況を指摘したうえで、米国政府が「イランの攻撃能力は健在だ」と評価したと報じた。英紙「ガーディアン」は、イランがミサイル能力の70%を維持し、ホルムズ海峡周辺にあるミサイル発射台33か所のうち30か所を復旧したとの米国政府内部の評価を伝えている。















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