
「憧れないでください」の前に「簡単に優勝したら面白くないだろう」があった。
大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は2023年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で野球の実力はもちろん、「優しいカリスマ」まで認められ、ワールドスターとして台頭した。アメリカとの決勝戦に先立ち、日本代表選手たちを集めて、これから対戦するメジャーリーガーを憧れの対象ではなく、競争相手として見るよう促した。
そして「(アメリカには)一塁にポール・ゴールドシュミットがいて、中堅手はマイク・トラウトで、外野にはムーキー・ベッツがいる。野球をしていれば誰もが聞いたことがあるような選手たちだが、今日だけは(憧れないでほしい)。憧れたら超えられない。最高になるために来たのだから、今日だけは憧れの気持ちは抑えて、、勝つことだけを考えよう」と付け加えた。

大谷は試合で「言行一致」を体現した。3-2でリードしている9回の最後の守備でムーキー・ベッツを併殺打に、マイク・トラウトを空振り三振に打ち取って試合を締めくくった後、雄叫びを上げた。日本が再びWBCの頂点に立つ瞬間であり、大谷が野球界の顔として浮上した瞬間だった。
しかし、実は大谷は決勝戦前にも本当に漫画の一場面のような名言を残していた。9回表まで4-5で追いかける展開から逆転サヨナラ勝利を収めたメキシコとの準決勝戦でのことだ。当時コーチングスタッフだった白井一幸ベンチコーチが日本の9回逆転劇に先立ち、大谷が選手たちの士気を高めた場面を振り返った。
日本はメキシコを相手に6回まで0-3で追いかける展開だったが、7回に吉田正尚(ボストン・レッドソックス)の3点ホームランで均衡を保った。8回には2失点の後1点を返し、1点差で9回裏を迎えた。9回裏の先頭打者は大谷だった。
白井コーチによれば、大谷は「こんなに簡単に優勝したら面白くないだろう?こんな危機があるからこそ優勝も価値がある。俺が出塁するから、後はよろしく」と言ったという。そして二塁打で同点のチャンスを作った。日本は吉田の四球と村上宗隆(シカゴ・ホワイトソックス)のサヨナラ二塁打で逆転勝利を収め、決勝に進出した。
3年が経過したが、白井コーチには今でも鮮明な場面だ。彼は「不安や諦めの気配は全く感じられなかった」と述べ、大谷の存在感に改めて感嘆した。













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