引用: AI制作画像
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世界2位の完成車グループ、フォルクスワーゲンが、未来の活路を防衛産業に見いだそうとしている。イスラエル国営の防衛関連企業ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズと手を組み、販売不振に悩むドイツ・オスナブリュック工場を、イスラエルの代表的な防空システム「アイアンドーム」の部品生産拠点に転換する案を協議しているのだ。フィナンシャル・タイムズが複数の関係者の話として初めて報じ、フォルクスワーゲンは「依然として工場の活用方法を検討している」との立場を示した。

カブリオレラインが発射台ラインになる

転換対象のオスナブリュック工場は約2,300人が勤務し、現在T-Rocカブリオレを製造している。しかしこのモデルは2027年中盤に生産を終了する予定で、オリバー・ブルーメCEOは来年以降、この工場でフォルクスワーゲンの自社車両を生産しないとすでに明言していた。事実上閉鎖せざるを得なかった工場に、防衛産業という新たな役割を担わせる構想だ。

注目すべきは生産品目だ。オスナブリュックで製造されるのは迎撃ミサイルそのものではなく、大型輸送トラック、発射台、発電機などの支援装備だ。ミサイル本体は、ラファエルがドイツ国内の別施設で生産する計画だという。完成車メーカーの強みである大型車両・中型機器の製造能力と、防衛産業の需要が交わる接点がこの支援装備なのだ。内部関係者はフィナンシャル・タイムズに雇用目標について「全員を守ること、もしかしたら増やすこと」と語っており、労使合意が得られれば12〜18か月以内に生産転換が可能との見通しが出ている。

なぜ防衛産業なのか ディーゼルゲート以来最悪の業績が背景に

フォルクスワーゲンがこのカードを切った背景には危機がある。フォルクスワーゲングループの2025年営業利益は前年比53.5%減の89億ユーロ(約1兆6,400億円)、純利益は44%減の69億ユーロ(約1兆2,700億円)と、ディーゼルゲート以降で最悪の水準を記録した。最大市場である中国でBYDなどの地元企業に押され、2026年第1四半期の販売は20%減少し、力を入れてきた電気自動車戦略も思うように進んでいない。余剰工場と遊休人員を防衛産業に振り向け、空白を埋めようという苦肉の策だ。

この工場転換は、フォルクスワーゲンが準備中の大規模な構造改革の一部に過ぎない。同社は3月、2030年までにドイツ国内で5万人を削減する計画(アウディ・ポルシェを含む)をすでに発表しており、海外メディアの報道によれば、最近はハノーファー・ツヴィッカウ・エムデンなどの工場閉鎖を含め最大10万人を削減し、工場4カ所を追加閉鎖するというより急進的な案が監査役会に諮られているという。防衛産業は、その大きな穴を埋めるいくつかの新事業の一つだ。

ドイツ産業全体を貫く流れ、立ちはだかる障害もある

フォルクスワーゲンの選択は、一企業だけの突出した動きではない。かつて世界を席巻していたドイツ自動車産業が停滞に陥る中、余剰生産能力を防衛産業に振り向ける流れが業界全体を貫いている。ドイツ安全保障・防衛産業連邦協会は昨年、遊休自動車生産能力の防衛産業への再活用を提案し、ベルリン政府は大規模な再軍備計画とEUの「リアーム・ヨーロッパ」の枠組みの下、数千億ユーロ規模の予算を投じ始めた。

ラインメタルはすでにベルリンとノイスの自社自動車工場2か所を武器生産ラインに転換しており、先にメルセデス・ベンツが対ドローン新興企業タイタン・テクノロジーズと、ルノーがフランスで戦術用ドローン生産に乗り出したのも同じ文脈だ。興味深いのは、オスナブリュックを巡って元々ラインメタルとの売却交渉があった点だ。この協議は昨年末に行き詰まり、ラインメタルは3月中旬に買収を断念したとされる。その空白をラファエルが埋める構図となるため、今回の取引は、ドイツとイスラエルの防衛産業協力を格上げする意味合いも持つ。

ただし確定したことはない。アイアンドーム部品生産に関する最終合意はまだ行われておらず、ドイツ労働法上強い発言権を持つ労働者評議会の承認が決定的な変数だ。ここにフォルクスワーゲンの3大株主であるカタール投資庁がイスラエル防衛産業企業との協力に拒否感を示している点も障害として挙げられる。

自動車会社とは結局何を作る会社なのか?

「国民車」という名前の通り大衆のための自動車を作ってきた会社が、創立90年近く経ってミサイル防御装置を論じる時代になった。対ドローン仕様Gクラス車両とともに、フォルクスワーゲンのアイアンドーム工場はヨーロッパ完成車産業が直面する構造的転換を象徴的に示している。電動化競争で後れを取り、中国市場でシェアを失った空白に、地政学的緊張が生んだ「防衛産業特需」が入り込んできているのだ。

この光景は、世界の完成車・防衛産業界にも一つの問いを投げかける。フォルクスワーゲンのカブリオレラインが発射台ラインに変わるこの転換は、「自動車会社が何を作る会社なのか」という問いの答えが、ヨーロッパから再び書き換えられていることを示している。

山田雅彦
山田雅彦

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